松平与副

松平与副（まつだいら ともすけ）は、室町時代中期から戦国時代にかけての武士であり、形原松平家の祖としてその名を歴史に刻んでいます。

彼は松平信光の五男として生まれ、初めは三河国額田郡中山領内に七百貫文の地を領していました。文明12年（1480年）には、さらに五十貫文が加えられ、宝飯郡形原郷へと移り住むことになります。この地が、後の形原松平家の基盤となりました。

永正年中の12月21日、与副は形原で生涯を閉じました。享年は不明ですが、彼の遺体は愛知県蒲郡市西浦町北馬場の法林山光忠寺に葬られています。法名は「玉峯院殿前佐州信誉叟元光忠大居士」といい、彼の功績と人となりを偲ばせるものです。

与副の死後、その子である貞副は、父の菩提を弔うために形原城の南西に光忠寺を建立しました。寺号は与副の法名にちなんで名付けられたとされています。また、一説には、弟の光重が形原松平家との繋がりが深く、与副の没後に菩提寺として光忠寺を建てたとも言われています。

近年、村岡幹生は『参州本間氏覚書』の記述から、光重の兄である形原松平家初代は「光忠」が正しいのではないかという説を唱えています。これは、『寛政譜』などで光忠が与副の法名とされているのに対し、与副は息子とされる松平貞副の別名もしくは誤記である可能性を示唆するものです。

このように、松平与副は形原松平家の祖として、また光忠寺の建立を通じて、その名を後世に残しています。彼の生涯は、室町時代から戦国時代にかけての武士の生き様を伝えるとともに、地域社会に深く根ざした信仰のあり方を物語るものでもあります。

参考文献

『続藩翰譜』
『寛政重修諸家譜 第一輯』巻第二十三（国民図書、1922年）

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