松本流

松本流の概要

松本流（まつもとりゅう）は、日本の舞踊の中でも特に重要な流派の一つです。この流派は、吉祥寺の藤間流から派生しており、八代目松本幸四郎（後に初代松本白鸚）によって創設されました。松本流の特徴は、歌舞伎の要素が色濃く反映された演技的な舞踊スタイルであり、定紋には四ツ花菱が使用されています。また、御殿舞にも同名の流派が存在しますが、松本流とは直接の関連はありません。

沿革

松本流の歴史は、八代目幸四郎の父である七代目松本幸四郎の意向に基づいています。彼は藤間流の三代目家元である三代目藤間勘右衛門でもありましたが、既存の藤間流の型にとらわれることなく、歌舞伎役者としての自身の創作舞を後世に受け継ぐため、新たに松本流を創立しました。七代目は自身の次男を家元として指名し、彼自身はその後見的な立場を取ることにしたのです。これにより、実の兄弟がそれぞれ松本流と藤間流の家元を務める形となりました。

初代松本白鸚が亡くなると、彼の長男である九代目松本幸四郎（後の二代目白鸚）が家元の座を継ぎました。九代目幸四郎は多忙な俳優として活躍していましたが、演技や舞台演出の活動が増えたため、松本流の家元としての役割を思うように果たせない時期が続きました。そうした中で1995年、彼は家元職を長男である七代目市川染五郎（後の十代目松本幸四郎）に譲ることを決意しました。これにより、七代目染五郎は曾祖父である七代目松本幸四郎が使用していた俳名「錦升」を襲名し、松本流の三世家元として新たなスタートを切りました。

また、七代目錦升の姉妹である松本紀保と松たか子（共に女優）は、それぞれ「松本幸紀」「松本幸華」として松本流の名取となり、様々な舞台で活躍しています。

家元制度

松本流は家元制度を持つ流派であり、各世代が家元を継承していく構造が築かれています。流派が発展する中で、家元の役割は非常に重要であり、過去の舞踊技術や芸の伝承が課題となっています。特に、松本流の家元が培った技術や芸は、流派のスタイルを保ち続ける上で欠かせない要素となっています。

米三派との関連

松本流は藤間流を祖としていますが、かつて寛政年間に松本米三郎を祖とする同名の流派が存在していました。この流派は「米三派」と呼ばれ、藤間流の「幸四郎派」と区別されていました。しかし、米三派は徐々に衰退し、戦後には完全に廃絶しました。

参考文献

松本流に関する詳細な情報は、藤田洋著『日本舞踊ハンドブック』（三省堂、2001年）を参照してください。松本流の現代における活動の場としては、松鸚會があり、松本錦升が主催しています。

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