松本清

松本清：実業家から政治家へ、そして伝説の「すぐやる課」創設者

松本清（1909年 - 1973年）は、現代日本においてもその名を知られるドラッグストアチェーン『マツモトキヨシ』の創業者であり、政治家としても顕著な足跡を残した人物です。千葉県我孫子市出身の彼は、貧しい農家の息子として生まれながらも、持ち前の行動力と革新的な発想で、幾多の困難を乗り越え、成功を収めました。

困難な道のりからの出発

幼少期、松本は貧困の中で育ちました。しかし、小学生時代に偶然目撃した県議会議員の威厳ある姿に感銘を受け、将来は県議会議員になると宣言したエピソードは、彼の強い意志と野心を物語っています。この夢は母親からは一蹴されたものの、後に現実のものとなるのです。

丁稚奉公をしながら薬の勉強を始めた彼は、星製薬商業学校を卒業後、薬種商免許を取得し、「松本薬舗」を開業。その後、小金町議会議員、千葉県議会議員へとその活動の場を広げていきます。

マツモトキヨシの誕生と政治家としての活躍

1951年、千葉県議会議員1期目に当選した松本は、自らの経営する薬局の屋号を「マツモトキヨシ」と改称しました。この決断は、後の彼の政治活動における知名度向上に大きく貢献することとなります。選挙運動を通じて浸透していった名前は、政治家としての彼と、経営者としての彼、双方を同時にアピールする効果を生んだのです。

千葉県議会議員を2期務めた後、1956年には県議会議長に就任。さらに、千葉日報社社長も兼任するなど、その活躍は多岐に渡ります。

松戸市長としての改革：伝説の「すぐやる課」

1969年、松本は松戸市長に当選。彼の市長在任期間は、地方行政における画期的な改革の時代となりました。着任早々に、市民サービス向上と官僚主義の打破を目指し、日本初となる「すぐやる課」を設立したのです。

「すぐやる課」は、市長直属の部署として、従来の縦割り行政の壁を乗り越え、迅速な市民対応を実現しました。その革新的な取り組みは全国的な注目を集め、多くの自治体が同様の部署を設立するなど、大きな影響を与えました。「すぐやる課」の設立は、地方行政における迅速な対応の重要性を訴え、日本の行政改革の大きな一歩となりました。その後のテレビドラマやバラエティ番組への取り上げからも、その影響力の大きさが伺えます。

投票率向上のための革新的な試み

また、松本は、投票率向上のため、公職選挙法の枠内で、選挙に投票した人の中から抽選でカラーテレビなどを景品として贈呈する試みを行いました。この大胆な試みは、投票率の向上に繋がり、その成果を上げました。

松本清の功績とその後

松本清の功績を称え、松戸市にはかつて「松本清記念会館」が存在していました。また、彼の名にちなんだ地名も存在しており、その影響力の大きさが伺えます。彼の逝去後も、松戸市は記念フィルムを製作するなど、彼の功績を後世に伝える努力を続けています。

松本清は、一介の農家の息子から、一代で成功を収めた実業家、そして改革に邁進した政治家として、日本社会に大きな足跡を残しました。その人生は、困難に立ち向かう勇気と、革新的な発想の大切さを教えてくれる、貴重なものです。彼の功績は、『マツモトキヨシ』という企業の形だけでなく、「すぐやる課」という行政改革の精神として、今もなお、人々に影響を与え続けていると言えるでしょう。

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