松枝輪中

松枝輪中（まつえだわじゅう）

松枝輪中は岐阜県の南西部、木曽三川流域に位置した歴史的な輪中です。この地域は現在の岐阜市と羽島郡笠松町の一部にあたり、古い行政区画では羽島郡柳津村（後の柳津町）や松枝村を含みます。松枝輪中は木曽川と境川に挟まれた場所にあり、西には足近輪中、南には正木輪中が隣接しています。また、田代輪中とも呼ばれることもあります。

境川は旧木曽川の一部であり、現在は水量が減少して河川敷が新田として開発されています。これにより、松枝輪中の東には東野田輪中、西には西野田輪中が存在しています。

歴史

宝暦治水までの状況

松枝輪中が形成される地域は、輪中地帯の最上流部に位置し、元々周囲よりも高い土地でした。そのため、江戸時代中期までは上流側にのみ堤防が築かれる「尻無堤」の状況でした。

畑繋堤の築造

1755年、宝暦治水によって長良川の水位が上昇し、これが境川の流れに影響を及ぼしました。このため、松枝輪中に逆水が流入する事態が発生します。1767年には境川の逆水防止のための堤防建設が笠松の堤方役所に願い出されますが、加納輪中の強い反対に遭い、計画は頓挫しました。

住民たちは耐え難い状況に対抗するため、1783年頃に「畑に堆肥を入れる」という名目で無断で盛り土を行い、これが畑繋堤と呼ばれる小堤の形成に繋がります。しかし、この工事も加納輪中の訴えにより中止させられました。この過程で、柳津村の役人4名が陳情のために出向くも、捕らえられて獄死するという悲劇も発生しました。

1805年にも再度無願工事が行われましたが、加納輪中の訴えでまたもや中止される結果に至ります。しかし、松枝輪中の住民らは堤防の必要性を訴え続けました。

最終的には、北方代官であり川並奉行に任じられた酒井七左衛門の支援により、松枝輪中の陳情が受け入れられました。彼の調停により「流れた土を元通りにする」という名目での堤防築造が許可され、1811年に畑繋堤が完成しました。

現在、酒井七左衛門や獄死した役人たちは畑繋大神宮に祭られており、その跡地は岐阜市の指定史跡として残されています。

逆水除け締切堤の建設

畑繋堤の完成により、松枝輪中の北側には連続した堤防が確立されましたが、南側は足近輪中と正木輪中の堤防しか存在しませんでした。そのため、逆川に対する堤防が不足していました。1832年には逆水除けのための締切堤が完成し、この際に曲利、須賀、不破一色、市場という4つの村が松枝輪中に加わることとなりました。

松枝輪中の歴史は堤防の築造と地域の防災意識の高まりを物語っており、今も地域住民の記憶に生き続けているのです。

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