松田権六

松田権六について

松田権六（まつだごんろく）は、1896年、石川県金沢市で誕生しました。彼は、日本の蒔絵技師としてその名を馳せ、文化勲章を授与された人間国宝です。早くから蒔絵技術に魅了された権六は、7歳の時に兄の指導を受けながら修業をスタートさせました。彼の技術と感性は徐々に磨かれ、石川県立工業学校漆工科、さらには東京美術学校漆工科での学びを経て、蒔絵の専門家として成長していきました。

1943年に東京美術学校の教授に就任した権六は、以後の36年間、学生たちに漆芸の技術を教え続けました。その間、1947年には日本芸術院の会員に選ばれ、1955年には人間国宝として認定されました。彼は伝統工芸の振興だけでなく、並木製作所の蒔絵万年筆など新しい蒔絵の確立にも寄与しました。

権六は、漆工芸に関する多くの著作を残しています。なかでも、1965年に出版された『うるしの話』は非常に評価が高く、毎日出版文化賞を受賞しました。彼の作品や教えは、多くの後進に引き継がれ、漆芸の発展に貢献しています。彼の技術や知識は、ただ古代の技法を再現するだけでなく、現代のニーズに応える形に進化させてきました。その結果、権六は「漆聖」とも称えられる名匠となりました。

経歴の詳細

権六の生年である1896年は明治29年でした。彼は大桑町の農家に生まれ、7歳から蒔絵技術の修業を始め、1914年には石川県立工業学校を卒業しました。卒業後、東京美術学校へ進学し、1919年に卒業。その年に陸軍に入隊し、しばらくの間、軍人生活を送ります。

1921年を境に、権六は再び美術の世界に本格的に身を置くことになります。彼は東洋文庫での仕事を経て、1925年に並木製作所に入社し、様々な漆工芸の製品に関わりました。1926年には、金沢で文子さんと結婚し、次第に家庭生活と仕事を両立させていきました。

1931年には、帝国議会議事堂の漆工事を担当するなど、その技術が評価され、名声を集めました。1943年には教授として後進の指導にあたり、彼の教える技術や理論は多くの人に影響を与えました。以降も様々な役割を担いながら、蒔絵の技術を広め続けました。

彼の業績は数多く、1966年には毎日新聞でのコラム連載を開始、1967年には輪島市漆芸技術研修所の開講へも尽力しました。彼は国からの栄誉も多く、1976年には文化勲章を受章し、1983年には輪島市名誉市民となりました。

権六は、1986年に90歳で亡くなるまで、漆工芸の発展に貢献し続けました。彼の葬儀は、日本工芸会の主催で行われ、彼の業績を偲ぶ多くの人々が集まりました。彼の影響は、彼の生きた時代に留まらず、現代の漆芸愛好者や作家にも影響を与え続けています。

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