林善茂

林 善茂の生涯と業績

林善茂（はやし よししげ、1922年 - 2013年）は、日本の経済学者であり、特に農業経済学とアイヌ民族文化の研究で知られる存在です。彼は北海道小樽市に生まれ、北海道大学での教育と研究生活を通じて多くの業績を残しました。

学歴と早期のキャリア

林は1938年に北海道帝国大学の予科農類に入学し、1943年には農学部の農業経済学科を卒業しました。卒業後は大学に残り、研究生や助手として経験を積んだ後、1948年に助教授に昇進しました。この時期から彼の学術的な活動が始まり、農業経済の分野における研究を深めていきます。

北海道大学への移籍

1953年、林は新設された北海道大学経済学部に転任しました。1962年には農学博士号を取得し、翌年には教授に昇格しました。この経済学部での活動が彼のキャリアの中で大きな影響を持ち、研究と教育の両面で多くの成果を上げることになります。

経済史に関する論争

彼は経済学部長として1976年に就任し、その在任中にいくつかの論争を巻き起こしました。特に1977年に行った講義では、北海道経済史を視点にアイヌの歴史に対する発言が問題視されました。彼は「主体は日本人であり、アイヌではない」との見解を示し、それが学生やアイヌ団体からの強い反発を受けました。このことにより教室が封鎖される事態にも発展しましたが、後に林は全面的に謝罪することとなります。

定年退官後の活動

1985年に北海道大学を定年退官し、名誉教授の称号を得た林は、その後名古屋商科大学に教授として招聘されました。1994年まで「経済学史概論」などの授業を担当し、学問の場での影響力は続きました。また、1996年には勲二等瑞宝章を受章し、その業績が広く認められました。

出版物と貢献

林の著作には、『内村鑑三と新渡戸稲造』や『アイヌの農耕文化』などがあります。特に『アイヌの農耕文化』は、アイヌ民族の文化的背景と農業の関連についての重要な研究として位置づけられています。これらの著書は、彼の研究の成果を反映し、多くの読者に影響を与えました。また、北海道大学文書館に書籍資料を寄贈するなど、学問への貢献を続けました。

林善茂は、彼の専門分野だけでなく、アイヌ文化の理解を深めるための貴重な業績を残した経済学者です。彼の生涯は学問と社会に対する献身の象徴として、今もなお多くの人々に記憶されています。

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