林碩

林碩（りん せき）は、生年は不明ながら、1438年に没した明代の官僚です。字は懋弘といい、福州府閩県を本貫としていました。

官僚としての歩み

1412年（永楽10年）、林碩は進士の試験に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。監察御史に任じられ、山東巡按として地方の行政を監督する役割を担いました。この時期から、彼は不正を許さない厳格な姿勢を示していたと考えられます。

1426年（宣徳元年）12月、林碩は浙江按察使に転任しました。この役職は、地方の司法・監察を司る重要なものでした。しかし、その職務の中で、彼は不正に手を染めようとする者たちと対立することになります。

不正との闘いと誣告

1427年（宣徳2年）、千戸の湯某が宦官の裴可烈と結託して不正な利益を得ようと画策しました。林碩はこれを看過せず、法に則って湯某を逮捕しようとしました。しかし、この動きは裴可烈の反発を招き、林碩は逆に裴可烈からの誣告によって逮捕されてしまいます。

林碩は、この不当な扱いに対して、宣徳帝に直接訴え出ることを決意します。宮廷に赴き、帝の面前で叩頭し、自身が小人に貶められている現状を訴えました。この直訴が功を奏し、宣徳帝は林碩の訴えを認め、彼を釈放して按察使の官に復帰させました。同時に、裴可烈を譴責し、不正を正す姿勢を示しました。

再びの試練

1431年（宣徳6年）、林碩は寧波府知府の黄永から賄賂を受け取ったという誣告を受けました。この時も、彼は潔白を主張し、結果として赦免されています。しかし、度重なる誣告は、彼にとって大きな精神的な負担となったでしょう。

最期

1438年（正統3年）、林碩は赦令の解釈を誤り、死罪に値する者を釈放してしまいました。この過失を理由に、僉事の耿定から弾劾を受け、逮捕され尋問を受けることになりました。彼は金銭を献納して罪を贖い、再び職務に戻ることができましたが、この事件は彼のキャリアに大きな影を落としました。同年12月、林碩は広東左布政使に転任を命じられましたが、赴任することなく亡くなりました。

林碩は、不正を許さない厳格な姿勢と、困難に屈しない強い意志を持った官僚でした。しかし、その一方で、誣告や誤解によって苦しめられるという不運も経験しました。彼の生涯は、明代の官僚社会における不正と、それと闘った人々の苦難を物語る一例として、歴史に刻まれています。

参考文献

* 『明史』巻161 列伝第49

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