柏祐賢

柏 祐賢

柏 祐賢（かしわ すけかた）は、1907年（明治40年）11月10日に生を受け、2007年（平成19年）3月12日にその生涯を閉じた日本の農学者および農業経済学者です。京都大学名誉教授であり、また第2代京都産業大学学長を務めた教育者としても功績を残しました。特に、後に中華民国総統となった李登輝が京都大学農学部に在籍していた際の恩師として、広くその名が知られています。

経歴

柏祐賢は1907年、富山県立山町に生まれました。京都帝国大学農学部農林経済学科で農林経済学を修め、1933年に同大学を卒業しました。卒業後、同年には農林省に入省し、国家公務員としてのキャリアを開始しました。1936年には母校である京都帝国大学農学部へ助手として戻り、研究と教育の道へと進みました。1939年には同大学農学部の講師に昇進し、さらに同年11月には京都帝国大学人文科学研究所の助教授となりました。

第二次世界大戦終結後の1947年4月、京都帝国大学人文科学研究所の教授へと昇進しました。1948年8月には、自身の学位論文である『経済秩序個性論：中国経済の理論的研究』を京都大学に提出し、農学博士の学位を取得しました。1949年5月からは京都大学農学部の教授を務め、農史講座、そして1952年からは農学原論講座を担当し、多くの後進を育成しました。1971年に京都大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与されました。

京都大学を離れた後も教育活動を継続し、1971年4月より京都産業大学教養部の教授として教壇に立ちました。1972年4月には教養部長に就任し、大学運営にも携わるようになります。1976年4月には京都産業大学の副総長となり、さらに1978年9月からは1996年9月までの長きにわたり、第2代学長として大学の発展に尽力しました。また、1979年7月から1999年6月にかけては、学校法人京都産業大学の理事長も兼任し、経営面からも大学を支えました。

大学における主要な役職

京都大学在職中には、教育・研究活動に加え、大学の管理運営においても重要な役割を果たしました。

1962年5月から1964年5月まで、京都大学評議員を務め、大学の方針決定に関与しました。
1967年8月から1968年4月にかけては、京都大学学生部長として、学生生活全般の責任者となりました。
* 1969年2月から同年12月までは、京都大学農学部長事務取扱として、学部運営の指揮を執りました。

研究と業績

柏祐賢は農学者および農業経済学者として、特に戦中から戦後にかけての激動期において、中国の「経済秩序」に関する独自の視点からの研究に取り組みました。単なる経済分析にとどまらず、そこから独自の歴史観や理論を構築し、提示しようと試みた点は特筆されます。その研究成果は複数の著書や論文として発表され、関連書として還暦記念出版の『近代農学論集』や、史観に関する『柏祐賢教授史観をめぐる40年』、著作集完成記念の『現代農学論集』などが出版されています。

受賞

長年の教育研究活動および大学運営への貢献が認められ、2001年には勲二等瑞宝章を受章するという栄誉に浴しました。

人物

柏祐賢は教育者として多くの門下生を育成しましたが、中でも台湾の民主化を主導し、中華民国総統を務めた李登輝は、京都大学農学部在学中に柏に師事し、多大な影響を受けたとされています。師弟の絆は深く、晩年には李登輝との関係に焦点を当てた関連書も出版されました。学長や理事長として大学の発展に尽くした一方、学問的には独自の道を追求し続けた、稀有な研究者であり教育者でした。

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