柳原敏雄

柳原敏雄

柳原敏雄（やなぎはら としお、1912年1月29日 - 1991年2月2日）は、昭和を代表する料理研究家です。群馬県に生まれ、旧制前橋中学校、東京農業大学を卒業しました。料理人としての道を歩み始め、割烹緑風閣を経営する傍ら、江戸懐石の奥深さに魅了され、独自の料理体系を築き上げました。

近茶流の創始

柳原敏雄の最大の功績は、1946年に近茶流を興したことです。近茶流は、単なる料理の流派ではなく、日本の食文化、伝統、そして精神性を重んじる思想を包含しています。彼は、素材の持ち味を最大限に引き出し、季節感を大切にした料理を追求しました。

東京赤坂で主宰した柳原料理教室からは、数多くの料理人を輩出しました。彼の教えは、料理の技術だけでなく、食に対する哲学や美意識にも及び、門下生たちに大きな影響を与えました。

著書

柳原敏雄は、数多くの著書を通じて、日本料理の魅力を広く伝えました。

『料理歳時記』(中央公論社 1955)
『惣菜歳時記』(中央公論社 1956)
『味の風土記』(婦人画報社 1959)
『魚介歳時記』(婦人画報社 1960)
『日本料理・春夏秋冬』(婦人画報社 1964)
『味をたずねて』(日本経済新聞社 1965)
『山菜歳時記』(婦人画報社 1968)
『日本料理の秘訣』(婦人生活社 1969)
『伝承日本料理』(日本放送出版協会 1977, 1992)
『料理名人のなるほど味ばなし 海の幸、山の幸春夏秋冬』(主婦の友社 1983)
『味のふるさと』西日本編、東日本編(中央公論社 1984)
『和菓子の旅 春夏秋冬』(共同通信社 1985)
『旬 日本の味』(創拓社 1986)
『味のかたりべ』(鎌倉書房 1986)

これらの著書は、日本の風土や文化と深く結びついた食のあり方を教えてくれます。歳時記シリーズでは、季節ごとの旬の食材を使った料理を紹介し、家庭料理の豊かさを伝えています。また、『味をたずねて』や『味のふるさと』では、日本各地の食文化を訪ね歩き、その土地ならではの味や風習を紹介しています。

家族

柳原敏雄の血筋は、現在も近茶流としてその精神が受け継がれています。子息である柳原一成は第二代宗家を継承し、近茶流の発展に尽力しています。娘の柳原一日は作家として活躍し、父との思い出を綴った『文人の素顔 緑風閣の一日』を著しています。この書籍は、料理研究家としての柳原敏雄の姿だけでなく、家族との温かい交流も垣間見ることができる貴重な記録です。

柳原敏雄の Legacy

柳原敏雄は、日本の食文化に多大な貢献をした人物として、今もなお多くの人々に敬愛されています。彼の著書や近茶流の教えは、時代を超えて受け継がれ、私たちの食生活を豊かにするヒントを与えてくれます。彼の功績は、日本の食文化史に永遠に刻まれることでしょう。

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