柴田等

柴田等（しばた ひとし）

柴田等は、1899年8月12日に生まれ、1974年2月17日に生涯を閉じた、昭和期の農林官僚であり、政治家です。宮崎県出身で、そのキャリアは農林行政から地方自治へと広がりました。

農林官僚から千葉県知事へ

1928年、京都帝国大学農学部を卒業後、農林省に入省。戦時中は大東亜省に出向し、ハノイやサイゴンの総領事を務めるなど、海外での経験も積みました。戦後は物価庁に勤務し、行政官としての手腕を発揮しました。

1947年、日本国憲法施行とともに、千葉県初の民選知事となった川口為之助の要請を受け、千葉県副知事に就任。農業再建を目標とする川口知事を支えました。1950年に川口が辞任すると、国民民主党と日本社会党の支援を受け、千葉県知事選挙に初当選。その後3期にわたり知事を務めました。

県政運営と政治的試練

知事時代、県議会で多数を占める自由党との対立に苦しみながらも、中立的な無所属会派「千葉クラブ」の台頭もあり、不安定ながらも県政を維持しました。1954年の知事選では、再選が危ぶまれる状況でしたが、最終的に自由党が候補者を擁立できず、日本共産党の候補を圧倒し再選を果たしました。この時の得票率は90.06%と、現在に至るまで最高記録です。しかし、投票率は29.31%と、戦後の都道府県知事選挙の中でも最低水準でした。

功績と評価

柴田は、官僚としての明晰な頭脳と庶民的な視点を持ち合わせた知事として、県政に大きく貢献しました。農業の再生に尽力し、川崎製鉄を千葉市に誘致し、京葉工業地域の基礎を築きました。また、優秀な官僚を副知事に迎え、後に県知事や国会議員となる友納武人や宮澤弘を育てました。これらの功績から、柴田は高く評価されています。

政治的対立と引退

県議会の離合集散が落ち着き、保守合同が進む中で、柴田は自由民主党に籍を置きました。しかし、農林官僚出身であることから、千葉県選出の自民党幹部から、工業化の遅れを批判されるようになりました。特に京葉工業地域の大規模な埋め立て計画に対して、柴田は漁民の生活を脅かすとして修正を求め、自民党幹部の反感を買いました。

1962年の知事選では、自民党から除名処分を受け、公認を得ることができませんでした。自民党は加納久朗を擁立し、柴田は自民党県議団に擁立されて四選を目指しましたが、社会党や県職員労組の反発も受け、結果として加納に敗れました。その後、加納が急死したことで再擁立の話も出ましたが、これには応じず、引退しました。


柴田等は、その生涯を通じて、農林行政と地方自治の両分野で重要な役割を果たしました。特に、千葉県知事としての功績は大きく、その名は今もなお語り継がれています。

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