栗原藩

栗原藩について

栗原藩（くりはらはん）は、江戸時代初期に下総国葛飾郡栗原郷（現在の千葉県船橋市西部一帯）を拠点とした藩です。徳川家康の関東入国時に成瀬正成が4000石を与えられたことに始まり、関ヶ原の戦いでの功績により加増を受け、大名となりました。しかし、藩主の急逝と後継者の夭折により、短期間で廃藩となった藩です。

初代藩主・成瀬正成

成瀬正成は、幼少の頃から徳川家康に仕えた人物です。小田原征伐後、家康が関東に入ると、下総国栗原郷で4000石を与えられました。関ヶ原の戦いでの功績により、甲斐国内で2万石、その後三河国加茂郡内で1万石を加増され、合計3万4000石の大名となりました。さらに、駿府で家康の側近として、本多正純、安藤直次とともに年寄衆に任じられました。

1607年、家康の九男である徳川義直が尾張国清洲藩主となると、正成は義直の傅役となり、清洲藩の行政法の制定に携わりました。その後、駿府に戻り、政務を執り行いました。1611年には、甲斐国内の2万石が尾張国内に移されました。1612年に平岩親吉が死去すると、正成が尾張国の国政を統括するようになりました。この頃、義直は居城を名古屋城に移し、名古屋藩（一般に尾張[[藩]]と呼ばれる）の藩主となりました。

正成から之成への継承

1617年、成瀬正成は徳川義直から犬山城を与えられました。この犬山城を与えられた年については、資料によって異なり、1616年とするものと1617年とするものがあります。また、正成が尾張[[藩]]の政務を統括するようになった年についても、1612年、1616年、1617年など、諸説あります。

正成が犬山に移る際、彼の領地3万4000石のうち、尾張国内の2万石を除く下総・三河国内の1万4000石が、二男の成瀬之成に与えられました。この分知が行われた年も、資料によって1616年とするものと1617年とするものがあります。之成は、それ以前に徳川秀忠の小姓として仕え、武蔵国で1000石を領知しており、これと合わせて1万5000石を領する大名となりました。1623年には近江国内で1000石を加増され、栗原藩は1万6000石となりました。

藩主の急逝と廃藩

1634年、成瀬之成は徳川家光の上洛に同行しましたが、39歳で急逝しました。同年、生まれたばかりの成瀬之虎が家督を相続しましたが、1638年に5歳で早世し、栗原藩成瀬家は無嗣断絶となり、廃藩となりました。

藩の領地と藩政

栗原藩の支配地域は、栗原郷を中心とする地域でした。具体的には、御舘村（本郷村）、寺内村、小作村、印内村、二子村、山野村、二又村、大野村、菅野村などが支配地でした。これらの村々は、現在の船橋市域と市川市域にまたがっています。特に本郷村は、栗原郷の中心部であったとされ、成瀬氏の菩提寺である宝成寺もこの村にありました。

栗原藩の藩政については、史料が乏しく、詳しい状況は不明です。陣屋の所在地も明確には判明していませんが、小栗原城跡や宝成寺周辺にあったと推定されています。

宝成寺と成瀬一族

宝成寺は、成瀬氏の菩提寺であり、元々は「法城寺」という寺でしたが、正成が菩提所とした際に現在の寺名に改められました。成瀬正成は宝成寺で荼毘に付され、後に日光に改葬されました。境内には、成瀬之成、之虎親子の墓や、正成の室、之成の継室、之成に殉死した家臣たちの墓などがあります。また、犬山成瀬家も宝成寺を葬地の一つとしており、犬山7代城主・成瀬正壽なども葬られています。これらの成瀬一族関係の墓は、20基以上存在し、船橋市の文化財に指定されています。

成瀬地蔵

京成西船駅付近には、「成瀬地蔵」と呼ばれる地蔵があります。かつては、成瀬之成が宇都宮釣天井事件に連座して切腹したため、その供養のために造立されたという伝承がありましたが、史実とは異なります。この地蔵は、1687年に印内村の名主や念仏講連衆の女性たちによって、早世した子供たちの供養のために造立されたものです。

まとめ

栗原藩は、成瀬正成が築き上げた藩でしたが、わずか一代で、後継者なく廃藩となりました。しかし、その歴史と成瀬一族の足跡は、現在も船橋市内に残る宝成寺や成瀬地蔵などに語り継がれています。

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