栗谷川平五郎

栗谷川 平五郎

栗谷川 平五郎（くりやがわ へいごろう）は、1908年10月4日に北海道名寄市で生まれ、1993年2月20日に亡くなった日本のクロスカントリースキーおよびノルディック複合選手です。彼は特に第二次世界大戦前の日本のスキー界において、傑出した選手の一人として名を馳せました。

経歴と競技人生

栗谷川氏の競技キャリアは、旧制札幌第一中学校を卒業後、札幌鉄道管理局（現在のJR北海道鉄道事業本部）に入局したことから本格的に始まりました。早くからその才能を開花させ、1928年の第6回全日本スキー選手権大会では、クロスカントリースキーの個人30kmおよびリレー種目で優勝を飾り、国内トップレベルの選手であることを証明しました。

その後、学問も修めるべく明治大学に進学。大学スキー界でもその実力は揺るぎないもので、1929年から1931年にかけて、全日本学生スキー選手権大会のクロスカントリースキー個人18kmで前例のない3連覇を達成しました。さらに、1930年の全日本スキー選手権大会では、ノルディック複合競技においても優勝を収め、クロスカントリーだけでなく、複合競技においても高い実力を有していることを示しました。

彼のキャリアにおけるハイライトの一つは、1932年にアメリカ合衆国で開催されたレークプラシッド冬季オリンピックへの日本代表としての出場です。この大会で、彼はクロスカントリースキーの個人長距離（18km）、個人耐久（50km）、そしてノルディック複合の合計3種目にエントリーしました。特にクロスカントリー18kmでは、当時の日本人選手として最高の12位という素晴らしい成績を収めました。この12位という記録は、その後長らく日本の男子クロスカントリー個人競技におけるオリンピック最高順位として破られることがなく、2002年のソルトレイクシティオリンピックで今井博幸選手が50kmクラシカルで6位に入るまで、実に70年近くもの間、日本のクロスカントリー史に燦然と輝く記録であり続けました。50km個人耐久レースは残念ながら途中棄権となりましたが、過酷な条件下での長距離レースへの挑戦は、彼の精神力の強さを示すものでした。ノルディック複合では、前半のクロスカントリーで一時3位につける健闘を見せましたが、後半のスキージャンプ競技で転倒などがあり、最終的には総合20位という結果に終わりました。しかし、前半の距離での成績は、彼のクロスカントリー選手としての非凡な能力を改めて裏付けるものでした。

国内での活躍に加え、栗谷川氏は国際舞台でもパイオニアとして歴史を刻みました。1933年には、スキー発祥の地の一つであり、世界で最も権威あるスキークラシック大会の一つとされるノルウェーのオスロで開催されたホルメンコーレンスキー大会に、日本人として初めて招待選手として出場を果たしました。これは、当時の日本のスキーレベルが世界的に認められつつあったことを示すとともに、栗谷川氏自身の突出した能力が国際的に高く評価されていた証と言えます。

引退後の貢献

現役を引退した後も、栗谷川氏は日本のスキー界への貢献を続けました。札幌鉄道管理局スキー部の監督として、多くの後進選手の育成に尽力しました。その後、北海道食料事業協同組合に勤務し、一時競技の第一線からは退いた時期もありましたが、その経験と知識は日本のスポーツ界にとって貴重なものでした。特に、1972年に地元札幌で開催された冬季オリンピックにおいては、大会の円滑な運営を支える競技運営副本部長という重要な役割を担い、大会の成功に大きく貢献しました。

栗谷川平五郎氏は、戦前の混乱期において、日本のスキー競技レベルを世界の水準に引き上げる一助となった偉大な選手であり、また引退後も指導者や大会運営者として、日本のスキー界の発展に多大な功績を残した人物として、その名を日本のスポーツ史に深く刻んでいます。彼の残した記録や、パイオニアとしての挑戦は、今なお多くの人々に記憶されています。

もう一度検索