根の国

根の国 - 日本神話における異界

根の国（ねのくに）は、日本神話に登場する特異な領域であり、さまざまな名前がつけられています。『古事記』では「根之堅洲國」や「妣國」、一方、『日本書紀』では単に根国や「底根國」と表現されています。また、祝詞の中では「根の国底の国」という表現や、根國底國、さらに「底根の国」という言葉も用いられています。

根の国の位置・性質

根の国は、その入口が黄泉の国と同じ位置にあることが、『古事記』の中で触れられています。具体的には、黄泉平坂（よもつひらさか）と呼ばれる場所です。このことは、大国主の神話に関連しています。しかし、興味深いことに、六月晦の大祓の祝詞では根の国は地下ではなく、海の深い所またはその彼方に存在するとされています。祝詞の中では、罪や穢れを根の国へ流すとされ、根の国は悪霊や邪鬼の起源とも考えられていました。

『古事記』には、スサノオが根の国を「妣の国」と呼び、この国から大国主が須勢理毘売命と出会った際に、生大刀、生弓矢、天詔琴を持ち帰るエピソードが描かれています。

諸説と考察

根の国の位置については、地下に存在するという意見がある一方、古くからの神話を現実的に解釈して、地上の特定の場所に関連付けようとする説も存在します。その中には、イザナミやスサノオと特に関係が深い出雲国が入口となっているという説があります。特に興味深いのは、鳥取県米子市に位置する「夜見」という地名や、黄泉平坂の比定地が島根県松江市に存在する点です。これに加え、安来市の比婆山にはイザナミの神陵があるとして、出雲東部が根の国であったとする説が提唱されています。

柳田國男は、根の国の「ネ」という音が琉球の他界信仰「ニライカナイ」と同じであると指摘し、そのために「根」の字が当てられたことで地下に存在すると考えられる形になったと述べています。彼の考えによると、根の国は元々は明るいイメージを持つ世界であったとされ、後に神話の解釈が変わっていった様子が伺えます。

まとめ

根の国は日本神話において、多様な文化や信仰と交差する特異な領域であり、その背景には多くの神話や伝説があります。どの地域や文化においても、死後の世界や異界への想像が豊かに描かれるように、根の国もまたその一環として位置づけられています。その存在は古代から現代にかけて、さまざまな解釈を生むものであり、今もなお人々の知識や信仰の一部として生き続けています。

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