根本進

根本進：漫画と絵本の世界を彩った動物愛溢れる作家

根本進（1916年 - 2002年）は、日本の漫画家、絵本作家として知られています。東京生まれで、慶應義塾大学を中退。漫画家としての道を歩む彼は、北澤楽天に師事し漫画の技術を磨き、一方、日本画家である川端龍子に師事し、日本画の薫陶を受けました。これらの経験が、彼独自の作風を確立する上で大きな役割を果たしたと言えるでしょう。

戦後、根本進は、独自の表現方法を探求し始めます。その結果生まれたのが、セリフを排したサイレント漫画です。視覚的な表現のみで物語を伝えるこのスタイルは、言葉の壁を超え、多くの人々の心を掴むこととなります。1951年からは、朝日新聞で『クリちゃん』の連載を開始。この作品は、彼の代表作となり、世代を超えて愛されるロングセラーとなりました。

『クリちゃん』シリーズは、数多くの作品から構成されています。初期の作品は朝日新聞社から出版され、その後も、交通道徳協会や、さ・え・ら書房などから様々な作品が刊行されました。『クリちゃん』シリーズでは、単行本に加え、『クリちゃん　オレンジの本』『クリちゃん　きいろの本』『クリちゃん　みどりの本』『クリちゃん　そらいろの本』といった、かわいらしいタイトルの書籍も出版されています。これらの作品は、クリちゃんのユーモラスな表情や仕草、そして何よりも動物への愛情が溢れており、子供たちを中心に広く親しまれています。

動物をこよなく愛した根本進は、『クリちゃん』シリーズ以外にも、動物をテーマにした作品を数多く発表しています。世界各地の動物園を取材したルポルタージュや、動物を主人公にした絵本などは、彼の動物への深い愛情と観察眼が感じられる作品群です。1998年には、『クリちゃんの動物園さんぽ』を出版、1999年にはこの作品で日本漫画家協会賞選考委員特別賞を受賞しました。これは、彼の長年の活動が広く認められた証と言えるでしょう。

彼の作品には、高度な描写力と、ユーモアあふれる表現が見られます。セリフのない漫画でありながら、クリちゃんの表情や行動から、読者は自然と物語に入り込み、感情移入することができるのです。また、動物に対する深い愛情と、細やかな観察眼に基づいた描写は、動物たちの生き生きとした姿を描き出しており、読者に感動を与えます。

根本進の作品は、『クリちゃん』シリーズにとどまりません。『まんが　たのしい造形』や『まんがのかき方』といった、漫画の技術や表現方法を解説した書籍も執筆しています。これらの作品は、漫画家を目指す人々にとって貴重な教材となっていることでしょう。

2002年、根本進は逝去しました。しかし、彼の作品は、現在も多くの読者から愛され続けています。セリフのないサイレント漫画という独自のスタイル、動物への深い愛情、そして高度な描写力。これらが融合した根本進の作品は、これからも多くの人々に感動と喜びを与え続けることでしょう。彼の息子である根本健氏は、元GPライダーであり、雑誌『ライダースクラブ』の元編集長として知られています。

根本進の残した作品群は、日本の漫画史、そして絵本史において重要な位置を占めるものと言えるでしょう。彼の作品を通して、私たちは動物への愛、そして豊かな想像力の大切さを改めて学ぶことができます。

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