桂扇枝

桂扇枝 — 上方落語の名跡

桂扇枝（かつら せんし）は、日本の上方落語界において重要な役割を果たした名跡です。現在この名跡は空き名跡となっていますが、歴史の中で数人の落語家がこの名を受け継いできました。

初代桂扇枝

初代桂扇枝は、後の3代目桂文三として知られています。彼の活動時期に関しての詳細はわずかですが、落語界における影響は計り知れません。初代は彼自身の才能や技術のみならず、楽屋での世話や興行活動においても多才でした。

2代目桂扇枝

2代目桂扇枝は1874年に生まれ、本名は浅田猶三郎でした。生家は大阪の薬屋で、1896年に2代目桂文昇の元で「歌昇」を名乗り、落語の道に入りました。初舞台は神戸の烏井筒太の席でしたが、その後神戸の寄席で活発に活動を続けました。

彼は1898年に3代目桂文三の弟子となり、「文雀」を名乗り、1903年にはついに扇枝を襲名しました。この名を受けた頃の評判は非常に良く、楽屋での他人の話を熱心に聞く姿勢が称賛されていました。得意なネタには「盲目景清」「鉄砲勇助」「にせの幽霊」などがあり、特に京の落語における名声を高めました。

また、噺の技術だけでなく、楽屋の世話役や興行同盟会の役員としても優れた手腕を発揮しました。さらに、初代桂枝太郎の京桂派の結成に貢献し、1913年11月には自らの引退披露を行い、その後も先斗町の貸席「今常」の主人として落語の発展に寄与しました。

3代目桂扇枝

3代目桂扇枝は1881年に生まれ、本名は田原芳二郎で、2代目月亭文都の親戚にあたります。彼は職人として曲げ物屋に勤務していたが、若い頃から素人連「竹の家連」に参加し、「竹の家扇枝」と名乗って活動を始めました。

正式には3代目桂文三の弟子となり、「三蝶」と名乗りましたが、その後の反対派活動が評価され、1919年には師匠の名を継ぐこととなりました。彼の新作落語には時事的なテーマが取り入れられ、大正時代には若手として注目されました。

1926年には、5代目笑福亭松鶴を中心とした中堅連の「花月ピクニック」同人としても活躍し、独特のスタイルでファンを惹きつけました。口が曲がっていたため、「口いがみの扇枝」や「違い棚の扇枝」という愛称で親しまれました。代表的な演目には「雁風呂」や「後家殺し」があり、オリジナルの発想力を生かしたパフォーマンスが多くの観客を楽しませました。

桂扇枝の名跡は、上方落語の中でも特に歴史的な位置を占めており、その魅力は今なお多くのファンに支持されています。それぞれの代を受け継いできた落語家たちの独自のスタイルは、今後も継承されていくことでしょう。

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