桂米太郎

桂米太郎

上方落語における「桂米太郎」は、現在空き名跡となっている名跡です。2019年現在、江戸落語に同名の桂米多朗がいるため、今後の襲名については不透明な状況です。これまで、桂米太郎の名跡には個性豊かな2人が名を連ねており、その芸歴は興味深いものです。

初代 桂米太郎

初代桂米太郎は、1896年生まれ、没年については昭和40年頃とされています。本名は不明です。当初は桂米若？門下で「文弥」を名乗り、新桂派に所属していましたが、大正時代後期に大八会に移籍し、「桂米太郎」と改名しました。

彼の芸の持ち味は、落語の「お玉牛」はもちろんのこと、「百面相」という珍しい芸にありました。中でも、田植えから米の炊き上がりまでの過程を表現した「米洗い」を、実際の米洗いの下座音楽にのせて披露する芸は、絶品と評されました。

昭和時代に入ると、寄席への出演は減り、漫才師やその他の芸人たちと一座を組んで活動するようになりました。晩年の昭和30年代には、テレビで「米洗い」を披露した記録が残っています。2代目桂ざこばこと桂朝丸も若い頃にこの「米洗い」に挑戦しましたが、その難しさから断念したという逸話も伝えられています。

2代目 桂米太郎

2代目桂米太郎は、1949年10月11日生まれ、1982年8月10日没。本名は池田賢次です。1970年4月、3代目桂米朝に入門しました。噺家になる前はコックとして腕を振るっており、内弟子時代には料理の腕前を生かし、師匠である米朝を支えていました。

広島県出身ということもあり、訛りが残っていたことから、落語家としての活動は盛んではありませんでした。しかし、後進の育成に尽力し、「岩田寄席」の世話役を務めるなど、若手落語家の指導に熱心に取り組んでいました。面倒見が良く、人望も厚かったため、32歳という若さで急逝した際には、大阪サンケイホールで一門総出演の追善落語会が開かれるほどでした。

まとめ

初代と2代目、異なる時代を生き、異なる芸風で活躍した2人の桂米太郎。その芸歴は、上方落語の歴史の一端を垣間見せてくれます。現在、空き名跡となっている「桂米太郎」の名跡が、将来どのように継承されていくのか、注目が集まります。江戸落語界にも同名の落語家がいるという現状も、襲名問題の複雑さを示唆しています。今後の動向に注目したいところです。

参考文献

諸芸懇話会、大阪芸能懇話会共編『古今東西落語家事典』平凡社、ISBN 458212612X
ご存知古今東西噺家紳士録

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