桐の花

『桐の花』－北原白秋の初歌集

『桐の花』は、詩人・北原白秋の最初の歌集で、1913年に出版されました。この作品は、彼の創作活動の初期にあたる1906年から1913年にかけて書かれた詩を集めたもので、全494ページ、449首の歌と6篇のエッセイから成ります。

この歌集のタイトル「桐の花」は、巻頭に置かれたエッセイ「桐の花とカステラ」から名付けられています。このエッセイは歌集全体に先立って、白秋の歌に対する思いや彼の美学を垣間見ることができる大切な部分です。彼の詩には、高尚な芸術観と情熱的な感情が色濃く表現されています。

『桐の花』の特徴は、青春の情熱と西欧風のロマンティシズムにあります。青春の官能が詩の随所に散りばめられており、若い恋愛や新しい出会いに対する高揚感が感じられます。歌集の後半では、白秋自身の恋愛にまつわるエピソードが反映された詩が視覚化されています。彼が体験した愛の葛藤や心の波瀾は、読者にも深い感銘を与えます。

歌集の中でも、特に有名な詩には次のようなものがあります：

• - 春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外（と）の面（も）の草に日の入る夕 これは春の訪れを感じさせる、自然と感情が交錯する美しい描写です。
• - 草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝（ね）て削るなり この歌は、春の草の新緑とともに、無邪気な子供の心情を表現しています。
• - 君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ こちらの詩は、朝の散歩の情景と、彼女との対話の温かさを感じさせる情景を描写しています。

この歌集は、白秋の詩的な資質と、彼の特異な感受性を示す貴重な作品であり、彼の後の詩業への道を開く重要な基礎となりました。また、「桐の花」は、恋愛の微細な感情や情景の美しさを詩にする力を持った作家としての彼の側面も浮き彫りにしているのです。

現在、『桐の花』に関する情報は、北原白秋記念館や青空文庫で多数の資料が閲覧できます。今日でも多くの文学愛好家に愛される作品の一つであり、白秋の独特な思考の流れを理解する上でも必見の資料です。

もう一度検索