桑取村

桑取村とは

桑取村（くわとりむら）は、かつて日本の新潟県中頸城郡に存在した自治体です。近代地方行政制度の導入に伴って誕生し、その後の市町村合併によって消滅した村であり、その歴史は明治時代から昭和時代中期にかけての約66年間に及びます。現在の行政区分では、上越市の一部にあたる地域に位置していました。桑取村の歩みは、当時の社会情勢や国の政策が地方自治体の形成・再編にどのように影響を与えたかを示す一例として、地方史において位置づけられています。

沿革

誕生：明治22年（1889年）

桑取村は、1889年（明治22年）4月1日に施行された「町村制」に基づいて発足しました。これは、明治政府が全国的に近代的で統一的な地方自治制度を確立するために推進した改革の一環でした。それまで個別に存在していた小規模な村々を統合し、より効率的で安定した行政運営を可能とすることを目的としていました。

桑取村の区域は、中頸城郡内にあった以下の9つの村の区域をもって構成されました。

増沢村
西吉尾村
東吉尾村
大淵村
土口村
北谷村
西谷内村
皆口村
* 横畑村

これらの村々が合併して一つの行政単位となることで、桑取村という新たな自治体が誕生し、中頸城郡の一村として地域の行政を担うことになったのです。この合併は、当時の地方制度の大きな流れに沿ったものであり、全国各地で同様の小規模自治体の統合が行われていました。

消滅：昭和30年（1955年）

桑取村が自治体としての役割を終えるのは、1955年（昭和30年）4月1日のことでした。この時期は、第二次世界大戦後の復興期を経て、より広域的な行政需要に対応するため、全国的に大規模な市町村合併が強力に推進されていた「昭和の大合併」の最盛期にあたります。財政基盤の強化、行政サービスの効率化、そして将来的な都市化への対応といった目的のもと、多くの小規模自治体が近隣の市町村と合併しました。

桑取村もこの流れの中で、隣接する直江津市に編入されることになりました。この編入により、桑取村は自治体としては廃止され、その区域は直江津市の一部として再編されました。村役場などの行政機能は直江津市に引き継がれ、地域住民は直江津市民となりました。この合併をもって、明治の町村制施行から始まった桑取村の独立した自治体としての歴史は約66年で幕を閉じることになります。

その後と位置づけ

桑取村が編入された直江津市もまた、その後の合併を経て、2005年（平成17年）1月1日に周辺市町村と合併して現在の上越市の一部となっています。したがって、かつて桑取村が存在した地域は、現在の上越市内の特定の地域に該当します。

桑取村の歴史は、明治初期の「大合併」による小規模自治体の創設と、昭和後期の「昭和の大合併」による広域自治体への再編という、近代日本の地方行政の二つの大きな波の中で語られるべき存在です。このような村の誕生と消滅の記録は、その地域がたどった歴史的な変遷や、日本の地方制度の発展過程を理解する上で貴重な史料となります。桑取村は、その名が『市町村名変遷辞典』などの歴史資料に記されており、新潟県の廃止市町村の一つとして、地方自治の歴史の一頁を飾る存在として記憶されています。

もう一度検索