梅毒

梅毒（Syphilis）

梅毒は、スピロヘータ族の一種である梅毒トレポネーマ（_Treponema pallidum_）によって引き起こされる性感染症です。この病気は、1998年にその全ゲノムが解読され、広く知られるようになりました。

概要

梅毒の症状は、感染の進行度によって異なり、通常は三つの段階に分かれます。重要なのは、病状は潜伏期を持ちながら徐々に悪化するため、しばしば自然に回復するように誤解されることです。特にⅡ期以降では、皮膚に現れる特徴的なバラ模様が目立ちます。また、感染していない期間も感染力が残るため、注意が必要です。治療は主にペニシリン系の抗生物質が使用されますが、完全な免疫は得られません。そのため再感染の可能性もあります。さらに、梅毒は他の性感染症に対する感染リスクも高め、特にHIVとの重複感染が多く見られます。

病原体

梅毒トレポネーマの特徴

梅毒トレポネーマは螺旋状の形態を持ち、グラム陰性で非常に活発に動きます。自然界での唯一の宿主はヒトであり、宿主がいなければ生存が難しい特性を持っています。この細菌は栄養素の合成に必要な代謝経路が欠落しているため、分裂に非常に長い時間がかかります。

感染経路

梅毒は、主に性行為やオーラルセックス、キスを通じて感染します。感染源は生殖器や口腔、肛門の皮膚や粘膜を介して体内に入ります。特に、米国では男性同士の性行為が主要な感染経路となっています。母子感染や輸血による感染も報告されますが、日常的な物の共有では感染することはありません。

症状

梅毒は感染後に三段階の症状を示します。初期に無症状のケースもあり、特に注意が必要です。

1期症状

感染後3週間から3ヶ月以内に、感染部位に無痛性の硬結が現れ、まれに潰瘍に進展します。また、リンパ節が腫れることも特徴です。

2期症状

感染後3ヶ月から数年にわたり、全身のリンパ節が腫れ、発熱や倦怠感、関節痛が現れます。特に、バラ疹と呼ばれる特徴的な発疹が全身に見られます。

潜伏期

症状が消えた後は潜伏期に入りますが、この期間も感染力を持ちつづけます。

晩期顕症梅毒

感染から数年後には、皮膚や臓器にさまざまな異常が現れることがあります。現代医学ではこの段階に至る前に治療できるケースがほとんどです。

予防と検査

性感染症である梅毒は、無防備な性行為を避け、コンドームの使用が推奨されます。また、定期的な検査が重要です。検査方法には、梅毒トレポネーマ抗原を使った方法と生物学的検査があります。

治療

治療法としては、ペニシリン系抗生物質が基本的な選択肢とされています。アレルギーのある患者には他の抗生物質が考慮される場合もあります。

日本における現状

日本では、2010年以降に感染者が急増しており、2022年には報告数が約10,000件を超えました。特に、SNSなどを通じた不特定多数との接触が影響しているとされています。梅毒の感染が再び深刻な問題となっている現在、警戒が必要です。

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