梶原善の「ビルぶら!レトロ探訪」

『梶原善の「ビルぶら!レトロ探訪」』は、2022年10月4日から2025年3月28日までBSフジで放送されたユニークな紀行バラエティ番組です。

この番組は、俳優の梶原善氏が案内役となり、日本各地に今も残る昭和時代に建てられた趣のある雑居ビルを深く掘り下げて探訪することをテーマとしています。単に外観や構造を見るだけでなく、そのビルが歩んできた歴史、そして何よりもそこで商いを営む人々や常連客といった、ビルに息吹を与えている人々の人生や建物への思いに焦点を当てるドキュメンタリーとしての側面も強く持っているのが特徴です。

企画のきっかけとなったのは、プロデューサーの上野潤也氏が感じていた「再開発によって駅前の風景が変わり、古いビルが次々と失われていくことへの惜しさ」でした。また、「外から見るだけでは少し敷居が高く、入りにくいと感じるようなビル内部にあるお店や、そこにいる個性豊かな人々（店主や常連客）に焦点を当てたら面白いのではないか」という発想が、番組誕生の種となったと語られています。

主演に梶原善氏が起用された背景には、従来の旅番組とは一線を画すイメージや、団塊世代であることに加え、プロデューサーがNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での彼の演技を見て強い関心を持ったことがあるそうです。

取材対象となるビルは、その外観、基本的に昭和期に竣工された築年数、そしてどんな店舗が入居しているかという基準で選定されます。事前のロケーションハンティング（ロケハン）では、実際に店舗のオーナーや常連客から話を聞くなど、丁寧な調査が行われています。

撮影は原則として1日で完結しますが、案内役の梶原氏が関係者からじっくりと話を聞くその真摯な姿勢や、必要に応じて後日改めて取材を行うケースもあることから、一つのビルを二週にわたって放送することも少なくありません。また、番組を支えるディレクター陣は、取材協力の取り付けに大変な労力を費やしており、ある店には2週間毎日通ったり、別の店には1か月にわたって2日に1回のペースで訪問したりといった粘り強い交渉を行っています。時には、頻繁に通いすぎたために警備員から不審者と間違われるといった苦労話もあったといいます。

番組の放送形式も特徴的で、開始当初は約4ヶ月間の新作放送期間の後、約2ヶ月間は過去の放送回の再放送期間が設けられ、その後に再び新作が放送されるというローテーションが組まれていました。2024年1月以降は、基本的に本放送と再放送がそれぞれ2週ずつ隔週で放送される形に変更されています。

番組制作を支えるスタッフには、ナレーションを務める西尾まり氏、構成の米田匡篤氏、オグロテツロウ氏、演出の柴田昌彦氏、京田宣良氏らが名を連ねています。プロデューサーは京田宣良氏、上野潤也氏、丹治哲雄氏、谷菜穂子氏が担当。制作協力はユーコム、プロジェクト暁、バンエイトが行い、制作著作はBSフジです。

このように、『梶原善の「ビルぶら!レトロ探訪」』は、単なる建物の紹介に終わらず、そこに息づく人々の営みや物語を通して、昭和の時代から現代まで続く街の息吹を伝えてくれる、温かく味わい深い番組でした。

番組の詳細はBSフジ公式サイトでも確認できます。

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