棚田康司

棚田康司：繊細な木彫りで描く、少年少女の静謐な世界

棚田康司は、1968年、兵庫県明石市に生まれた現代彫刻家です。東京造形大学美術学部彫刻科、東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻と、彫刻を専門的に学ぶ道を歩み、高い技術と芸術性を磨きました。文化庁芸術家在外研究員としてベルリンに留学した経験も持ち、国際的な視野も養っています。

彼の作品の特徴は、古来より伝わる「一木造り」という技法を用いた、少年少女をモチーフとした彫刻にあります。一木造りとは、一本の木材から彫り出す伝統的な木彫技法で、高度な技術と繊細な感性が求められます。棚田康司は、この技法を駆使し、まるで生きているかのような、繊細で生命感あふれる少年少女像を次々と生み出しています。

これらの作品からは、静謐で穏やかな、そしてどこか物憂げな雰囲気を感じます。少年少女たちの表情やポーズは、見る者の心に深く訴えかけ、それぞれの物語を想像させます。華奢で儚げな造形は、現代社会における人間の脆さや、失われつつある何かを象徴しているようにも見えます。

棚田康司は、国内外で精力的に作品を発表し続けています。1994年のギャラリー美遊での個展を皮切りに、ギャラリーαM、ミヅマアートギャラリー、void+、ヴァンジ彫刻庭園美術館など、数々の著名なギャラリーで個展を開催。2017年には、伊丹市立美術館でO JUNとの二人展「鬩」を開催するなど、その活動は多岐に渡ります。ミヅマアートギャラリーでは複数回に渡り個展を開催しており、同ギャラリーとの深い信頼関係が伺えます。

その作品は高く評価されており、2005年には第8回岡本太郎記念現代芸術大賞展特別賞を受賞。さらに、第20回タカシマヤ美術賞も受賞するなど、数々の賞を受賞しています。これらの受賞歴は、彼の高い芸術性と独創性を裏付けるものと言えるでしょう。

棚田康司の作品集「たちのぼる。」は、青幻舎から出版されています。この作品集は、彼の作品世界を深く理解する上で貴重な資料となるでしょう。

彼の作品は、単なる彫刻作品という枠を超え、見る者の心に深く刻まれる、忘れ難い体験を与えてくれます。繊細な技術と、独特の感性によって生み出された、静かで美しい少年少女像は、これからも多くの人の心を捉え続けることでしょう。 棚田康司の今後の活動からも目が離せません。

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