棟札(むなふだ、むねふだ)とは、
寺社や民家などの建物の建築や修繕の
記録、記念として、棟木や梁など建物内部の高い場所に取り付けられる札のことです。
概要
棟札は、一般的に木の札や銅板に
記録を記し、釘で打ち付けられます。建物の部材に直接
記録されることもあり、これは梁上銘と呼ばれることもありますが、その目的は棟札と同様です。
記録される内容は、建物の築造や修理の目的、その年月日、建築主や大工の名前、工事の内容などです。時には、それ以外の関連する事柄が記されることもあります。棟札の内容は、簡潔なものから詳細なもの、絵柄が描かれたものまで多種多様です。通常、棟札は一般の人の目に触れない場所に取り付けられるため、時が経つにつれてその存在が忘れられてしまうことも少なくありません。しかし、建物の解体や修理の際に、偶然発見されることがあります。
棟札に記された内容は、誤記などが見られる場合もありますが、その建物だけでなく、その地域の歴史や文化を研究する上で非常に重要な歴史的資料となります。そのため、
文化財に指定されているものも多く存在します。現在確認されている中で最も古い棟札は、岩手県の
中尊寺にある、保安3年(1122年)の銘を持つものだとされています。
文献に現れた棟札
建治元年(1275年)の日蓮の遺文には、棟札に関する記述が見られます。
>「一、棟札の事承り候。書き候ひて此の伯耆公に進らせ候。此の経文は須達長者祇園精舎を造りき。然るに何なる因縁にやよりけん、須達長者七度まで火災にあひ候時、長者此の由を仏に問ひ奉る…」(上野殿御書)
この記述から、当時すでに棟札が存在し、
記録として使用されていたことがわかります。
参考文献
* 秋山敬『棟札の基礎的研究』(2010年2月、岩田
書院)