森下篤史

森下 篤史

森下 篤史（もりした あつし）氏は、日本の実業家として、特に飲食業界を支える事業分野でその名を広く知られています。1947年2月13日生まれ。業務用厨房機器などのリサイクル・販売を手がけるテンポスホールディングスの創業者であり、現在も同社の代表取締役社長として経営の指揮を執っています。また、かつてステーキレストランチェーンとして親しまれている「あさくま」の経営再建に深く関わり、見事に立て直した人物としても注目されています。

経歴と人物像

森下氏は、静岡県磐田郡水窪町（現在の浜松市天竜区）に、お茶農家の子として生を受けました。愛知県立新城高等学校を経て、1971年に静岡大学教育学部を卒業。同年、東京電気株式会社（現在の東芝テック株式会社）に入社し、社会人としてのキャリアをスタートさせました。

会社員として経験を積んだ後、1997年にはテンポスバスターズ株式会社を設立。この会社は、閉店する飲食店から厨房機器や什器などを買い取り、メンテナンスを施して再び販売するという、リサイクルビジネスを核とするものでした。飲食業界の開業・閉店というサイクルに着目し、コストを抑えたい新規開業者や、不要になった設備を処分したい既存店双方のニーズに応える画期的なビジネスモデルを確立しました。

森下氏の経営手腕は、困難な状況にある企業の再建においても発揮されました。2006年、テンポスバスターズは株式会社あさくまと資本提携を結び、森下氏はあさくまの取締役に就任します。当時、あさくまは厳しい経営状況にありましたが、2009年には代表取締役の座に就き、本格的な経営改革に乗り出しました。社員が主体的に活躍できる環境づくりや、現場重視の経営を推し進めることで、業績を回復軌道に乗せることに成功しました。この再生の物語は、メディアでも取り上げられ、多くの人々の関心を集めました。

2017年には、テンポスバスターズを持株会社体制へ移行させ、社名をテンポスホールディングス株式会社に変更しました。森下氏は引き続き、同社の代表取締役社長としてグループ全体の統括にあたっています。グループ企業は厨房機器のリユース販売だけでなく、飲食店の経営コンサルティングや内装工事、M&A支援など、飲食店の開業から運営、閉店に至るまでをトータルでサポートする多様なサービスを展開しています。

あさくまの再建を成し遂げた後も、森下氏は親会社であるテンポスホールディングス社長として、あさくまの成長を後押ししました。その結果、2019年にはあさくまをJASDAQ市場（当時）に上場させ、親子上場という形で、その経営手腕と企業価値向上能力を改めて示しました。

森下氏の経営哲学やリーダーシップは、多くのメディアで注目されています。例えば、2015年8月にはテレビ東京系列の経済ドキュメンタリー番組「日経スペシャル カンブリア宮殿」に出演。「会社は社員が活躍する舞台！ '社員が変わる'驚きの企業再生術！」と題された回では、あさくまの再生プロセスにおける社員の育成やモチベーション向上に焦点を当てた、独自の経営手法が紹介されました。

また、その思想は著作にもまとめられています。2004年5月には、『「戦いモード」で会社が変わる 実践!「武士道」の成功法則』（PHP研究所）を出版。この著書からは、困難に立ち向かう「戦いモード」という独自のビジネス哲学や、社員を鼓舞し組織を活性化させるための考え方が垣間見えます。その経験に基づいた実践的な内容は、多くのビジネスパーソンに影響を与えています。

創業から現在に至るまで、森下篤史氏は飲食業界を基盤としたビジネスにおいて、常に新しい価値創造と企業成長を追求してきました。その独創的な発想と、社員一人ひとりの力を引き出す経営手腕は、日本の実業界においてユニークな存在感を示しています。

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