森丑之助

森丑之助：台湾先住民研究のパイオニア

森丑之助（もり うしのすけ、1877年1月16日-1926年7月4日）は、明治から大正時代にかけて活躍した日本の人類学者です。彼は台湾先住民研究の第一人者として知られ、その生涯は謎と功績が複雑に絡み合った、ドラマチックなものでした。

森丑之助は、京都の商家に生まれました。長崎商業学校で中国語を修めた後、1895年、わずか18歳で台湾に渡ります。当初は日本軍の通訳として赴任しましたが、間もなく台湾総督府の嘱託となり、本格的に台湾先住民の研究を開始しました。

当時の台湾には、平地に住む漢民族とは異なる、山岳地帯に暮らす「生蕃」（せいばん）と呼ばれる原住民が数多く存在していました。森丑之助は、台湾全土を踏破し、彼らの集落を一つ一つ訪ね歩きました。言語、文化、生活様式など、多岐にわたる調査を行い、人類学、民俗学的に貴重な膨大な資料を収集しました。これらの活動は、当時の台湾における先住民研究に大きな貢献を果たしました。来訪した日本人の案内なども務め、幅広い活動を行なっていたようです。

1915年、台湾先住民による大分事件が発生すると、森丑之助は先住民との交渉に当たりました。このエピソードからも、彼が先住民理解に深い関心を持ち、その立場に寄り添おうとしていたことが分かります。

彼の研究成果は『台湾蕃族図譜』、『台湾蕃人写真集』、『台湾山岳景観解説』、『阿眉蕃語集』など、数々の著作として結実しました。これらの著作は、今日でも台湾先住民研究において重要な一次資料として活用されています。

しかし、森丑之助の生涯は悲劇的な幕切れを迎えます。1923年の関東大震災で、東京の自宅に保管されていた膨大な台湾原住民関係資料や未刊原稿は焼失してしまいました。そして、1926年、帰国途中に乗船していた笠戸丸から姿を消し、飛び降り自殺したと伝えられています。しかし、その真相は明らかになっておらず、現在も謎のままです。享年50歳でした。

森丑之助は、日本の植民地支配下にあった台湾において、先住民の文化と生活を記録し、理解を深めようと努めた研究者でした。彼の研究は、今日の台湾先住民研究の礎を築いた重要なものであり、彼の謎めいた最期と共に、後世に語り継がれるべき、波乱に満ちた人生でした。彼の業績は、今日でも高く評価されており、台湾先住民研究において、欠かすことのできない存在です。彼の没後、彼の研究は多くの研究者によって引き継がれ、発展を遂げました。彼の功績は、これからも台湾と日本の歴史研究において、重要な役割を果たし続けることでしょう。

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