森圭一郎

森 圭一郎

1978年1月9日、埼玉県熊谷市（旧妻沼町）に生まれた森 圭一郎は、日本のシンガーソングライターであり、社会貢献活動「Love Hand Project」の発案者、そしてNHK Eテレの番組で「ストレッチマン パープル」としても活躍しています。

彼の人生は、16歳だった1994年夏に起こったバイク事故によって一変します。この事故で脊椎を損傷し、下半身が不随となり、車椅子での生活を余儀なくされました。しかし、この大きな試練が、後に彼の人生を彩る音楽との出会いへと繋がります。

高校時代、部活動で初めて歌とギターに触れた森は、文化祭での初舞台で「体の芯がビリビリするほど感動」し、「これが俺だと思った」と語るほど、音楽に深く魅了されます。1999年からはバーテンダーとして働く傍ら弾き語りを始め、ボイストレーニングを受けるなど、プロの道を本格的に目指すようになります。バンド活動を経てソロに転向し、ストリートライブやライブハウスでの活動を重ねた後、2002年に事務所と契約し、プロのシンガーソングライターとしての歩みをスタートさせました。

プロデビュー後は精力的に活動を展開します。2003年10月に自主制作アルバム『ONE』を発表すると、そのリリース日からの約3ヶ月間で、北海道から鹿児島まで約1万kmを走破する初の日本縦断ツアー「ONEツアー」を敢行しました。以降も立て続けにアルバムを発表し、2004年には約1万2千km、2005年からは3度目のツアー、2007年からは4度目、そして全国のコミュニティFM局へのゲスト出演を目標とした約3年間にわたる5度目のツアーを敢行するなど、文字通り全国を駆け巡り、自身の音楽とメッセージを届け続けました。2004年には自叙伝『両輪～ダブル・ホイール～』を出版し、その半生が多くの人々に知られることとなります。

2010年代に入ると、その活動範囲はさらに広がります。地元の熊谷市PR映画の音楽を手がけ、ゴールドコンサートでの楽曲賞・グランプリ受賞、介護ドキュメント映画への楽曲提供なども行いました。2012年には、約43日間かけてニューヨークからロサンゼルスまでアメリカ大陸を横断するツアーを成功させ、国際的にも活動の場を広げました。また、音楽CD付きコミックスの出版など、様々なメディアでその存在感を示しました。

2013年には結婚という人生の節目を迎え、同年から約1年間にわたる6度目の日本縦断ツアー「Road Trip 2013-2014 ひまわり ～笑顔の花を咲かせたい～」を実施。このツアーでは音楽活動と並行して、徳之島に特別支援学校を設置するための署名活動も精力的に行い、約2万人分の署名を集めることに貢献しました。徳之島とは縁が深く、特別支援学校設置活動を応援する楽曲「ひまわり」を制作し、現地の子供たちとレコーディングしたほか、徳之島一周75kmを車椅子で完走するという偉業も成し遂げています。

また、2013年からはNHK Eテレの子供向け番組『ストレッチマンV』に、ストレッチマンパープルとしてレギュラー出演を開始。シンガーソングライターとしてだけでなく、子供たちのヒーローとしても親しまれるようになり、街で「ストレッチマンパープル」と声をかけられると、笑顔で決めポーズに応える姿が見られます。

2014年には「本当のバリアフリー」実現を目指し、「Love Hand Project」を立ち上げ、その代表となります。このプロジェクトを広めるため、2015年にはハンドバイクでの日本縦断ツアーに挑戦しましたが、途中事故による重傷に見舞われながらも、リハビリを経てツアーを再開し、完遂しました。2016年にはプロジェクトを一般社団法人化し、理事に就任するなど、社会貢献活動にも力を注いでいます。

東日本大震災後には、ライブで義援金を募り被災地に届けたほか、震災をテーマにした楽曲「赤い紐」を制作し、アメリカ横断中に路上ライブなどで惨状を訴える活動も行いました。石巻市の中学校での講演では、「人生は挫折してから始まる」と語りかけ、「障害を乗り越えたんじゃなく、受け入れた」という自身の経験を candid に話し、聴衆に「あるがままの自分を受け入れればいいんだ」というメッセージを伝えています。

彼の音楽性は、エリック・クラプトンやブルーグラス、ブルースなど、アメリカのルーツ音楽に影響を受けつつも、独自の進化を遂げています。特に2012年のアメリカ横断以降は、日本の自然音を音楽に取り入れ、「地球音楽」と名付けた作品を発表しています。さらに、2023年からは樺太アイヌの伝統楽器であるトンコリを用いた演奏にも挑戦するなど、常に新しい表現を追求しています。

森 圭一郎の歌声と、困難に正面から向き合い、ひたすら前へ進むその生きざまは、多くの人々に勇気と共感を与えています。「なぜ自分だけ、と思う時はあるが、きりがない。前向きになれば、小さなことでも幸せを感じられ、好循環になる」と語る彼の姿は、まさに希望の光であり、その活動はシンガーソングライターの枠を超え、人々に生きる力を与え続けています。

もう一度検索