森田喜久男

森田 喜久男

森田 喜久男（もりた きくお）は、1964年に石川県に生まれた日本の歴史学者である。専門は日本古代史で、現在は淑徳大学人文学部歴史学科の教授を務めている。

来歴

郷里の石川県で育ち、歴史学への道を志して國學院大學文学部史学科に進学し、1987年に卒業した。さらに学術的な研究を深めるため、1989年には千葉大学大学院文学研究科史学専攻の修士課程を修了している。その後、東京都立大学（現在の東京都立大学の前身の一つである、1949年から2011年まで存在した大学）大学院人文科学研究科史学専攻の博士課程に進学し、1995年に単位を取得して退学した。

大学院での研鑽と並行して、あるいはその後、公的な機関での実務経験も積んでいる。特に、島根県教育庁文化財課古代文化センターの専門研究員や、島根県立古代出雲歴史博物館の専門学芸員として勤務した経験は、彼にとって非常に貴重な財産となっている。この期間、彼は古代の文化財や遺跡、そして出雲地方に根差した歴史・文化に直接触れる機会を得て、地域と中央の関係性や、考古学的な視点も踏まえた研究手法を深めたと考えられる。学術的な研究成果をまとめた論文「日本古代の王権と山野河海」により、2007年には駒澤大学から博士（歴史学）の学位を授与された。その後、淑徳大学に移り、人文学部歴史学科の教授として教育・研究活動に従事しており、同学科長も歴任している。

研究内容と業績

森田教授の主要な研究テーマは、日本古代史における多岐にわたる側面をカバーしているが、特に古代王権が自然環境、すなわち山野河海（山林、河川、海洋など）をどのように認識し、支配し、利用したのかという点に焦点を当てている。この研究は、単なる環境史にとどまらず、古代の社会構造、経済活動、信仰、国家形成といった広範な問題を解き明かす重要な視点を提供するものである。彼の博士論文を基礎とした主著『日本古代の王権と山野河海』（吉川弘文館、2009年）は、この分野における pioneering な研究として高く評価されている。この著作では、古代律令国家が山林や河川、海岸線をどのように法的に位置づけ、支配しようとしたのか、また、それらが古代の人々の生活や信仰にどのように関わっていたのかが、詳細な史料分析に基づいて論じられている。

また、長年の島根県での実務経験や研究から、古代出雲の研究も彼の重要な柱となっている。著書『古代王権と出雲』（同成社、2014年）では、『古事記』や『日本書紀』といった記紀神話にも登場する出雲の地が、中央集権的な古代国家の形成過程においてどのような役割を果たしたのか、文献史料に加え、考古学的な知見なども踏まえながら多角的に考察している。古代出雲が持つ独自性と、それがヤマト王権といかに交渉し、日本の古代国家システムに組み込まれていったのかというプロセスを明らかにする試みである。

これらの専門的な研究に加え、一般の読者にも古代史の魅力を伝えるための著作も手掛けている。『やさしく学べる古事記講座 原文を読むと神話はもっとおもしろい』（ハーベスト出版、山陰文化ライブラリー、2012年）は、古代日本の重要な文献である『古事記』を、原文に即しながらも分かりやすく解説しており、難解と思われがちな古典を、歴史学に馴染みのない読者にも親しみやすい形で紹介する努力を行っている。これらの著書や多数の学術論文を通じて、日本古代史の多角的な側面に光を当て、学界内外に貢献している。彼の研究成果は、CiNii（論文情報ナビゲータ）などの学術データベースで広く参照することが可能である。

主な著書

『日本古代の王権と山野河海』吉川弘文館、2009年
『やさしく学べる古事記講座 原文を読むと神話はもっとおもしろい』ハーベスト出版（山陰文化ライブラリー）、2012年
* 『古代王権と出雲』同成社、2014年

森田喜久男教授は、長年の研究と教育経験を通じて、日本古代史、特に王権と自然環境、そして地域史という視点から独自の貢献を行っている。緻密な史料分析に加え、文化財や博物館での実務経験から得られた視点は、彼の研究に深みを与えている。教育者としても、淑徳大学で次代を担う歴史研究者の育成に力を注いでいる。その研究活動は、古代日本の社会や文化への理解を一層深める上で重要な貢献をしている。

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