植物相

植物相の概念と分類

植物相（フローラ）とは、特定の地域や時代に存在する全ての植物種の総体を意味します。特に、その地域に自生する植物や在来種が含まれます。また、「Flora」という言葉は、植物の分類や記述を行った書物や資料を指すこともあり、日本では一般的に「植物誌」と訳されます。これらの言葉は、英語でも同様にフローラと呼ばれることがあります。

フローラという用語は、ローマ神話の花の女神の名前に由来しています。この概念に関連して、動物に関する用語としては「ファウナ（fauna）」が存在し、これは動物相や動物誌を指します。生物の分類学や生態学においては、植物相、動物相、そして菌類などを包括的に「生物相」と呼ぶことがあります。

植物相の分類

植物相は地域、時代、環境特徴、気候などによって多様なグループに分けられます。例えば、山岳地帯や低地によって自生する植物の種類が異なるため、地理的に異なる区分が生じます。また、植物相は化石植物相（fossil flora）を通じて過去の時代の植物界をも示すことがあります。

1. 在来植物相

在来植物相は、特定の時代に自生している在来種の植物を指します。これらの種はその土壌と文化に密接に結びついており、地元の生態系に重要な役割を果たしています。

2. 農業・園芸植物相

農業や園芸においては、人為的に栽培された植物がこの分類に該当します。これらの植物は、食料や景観の一部として農村や都市のエコシステムにおいて大きな影響を与えています。

3. 雑草植物相

雑草植物相は、伝統的には存在が好ましくないとされてきた植物群を指します。しかし、最近の研究では、多くの自生植物がかつて雑草と見なされながらも、生態系の維持において重要な役割を持つことが明らかになってきました。この場合、雑草は雑草種や侵入種（雑草性であろうとなかろうと）だけでなく、農業に適さない非雑草種の在来種や外来種も含まれます。

4. 細菌相

細菌相は植物相の一部に含まれることもありますが、場合によっては独立して扱われることもあります。

植物区系

植物相に基づく地理的な区分を「植物区系」（phytochorion、floristic region）と呼びます。最大の区分は「植物区系界」（floristic kingdom）と呼ばれ、世界を大きく6つの地域に分けることができます。この区系界の下位には「区系区」（region）や「地方」（province）が存在します。

• - 全北植物区系界（Holarctic Kingdom）
• - 旧熱帯植物区系界（Paleotropical Kingdom）
• - 新熱帯植物区系界（Neotropical Kingdom）
• - オーストラリア植物区系界（Australian Kingdom）
• - ケープ植物区系界（South African Kingdom）
• - 南極植物区系界（Antarctic Kingdom）

これらの区系は、地理的な特徴や生態系の違いを反映しています。各地域は特有の植物相を持ち、またその研究は、地域の自然環境や生物多様性を理解する上で重要な役割を果たします。

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