植皮

植皮：皮膚の修復と再生

植皮は、外傷や火傷などで失われた皮膚を修復するために、体の他の部分、あるいはドナーから皮膚を採取して患部に移植する外科手術です。移植された皮膚が生着するためには、移植片と患部の組織間に新たな血管網を形成する必要があります。そのため、患部の血行状態は良好であることが重要です。血行不良の部位には、他の移植方法が選択されます。

移植皮膚の生着過程: 移植直後から数日間は、患部の体液によって移植片が維持され、その後、移植片と患部組織の毛細血管が繋がることで血流が回復し、生着に至ります。しかし、患者自身または一卵性双生児以外の皮膚を移植した場合、永久的な生着は期待できません。同種移植の場合、皮膚は1～2週間で脱落します。

植皮の種類: 植皮には、大きく分けて遊離植皮と有茎植皮があります。

1. 遊離植皮術

これは、血行を遮断した皮膚を移植する方法です。移植する皮膚の厚さによって、分層植皮と全層植皮に分類されます。

A. 分層植皮術 (STSG): 真皮の一部を採取する方法で、厚さによって薄目、中間、厚目に分類されます。薄く採取するほど生着しやすく、採皮部の回復も早いですが、移植部位は外力に弱く、拘縮や色素沈着を起こしやすいというデメリットがあります。採皮部には傷跡が残ります。採取した皮膚片を網目状に加工することで被覆面積を広げる網目状分層植皮と、シート状にそのまま移植するシート状分層植皮があります。
B. 全層植皮術 (FTSG): 表皮と真皮の全てを採取して移植する方法です。移植した皮膚は、時間の経過とともに周囲の皮膚と似た性質になることはありません。

2. 有茎植皮術

これは、皮膚と血管を繋げたまま移植する方法です。かつては「皮弁」と呼ばれましたが、現在ではあまり使用されません。「皮弁」という用語は、皮膚だけでなく様々な組織をまとめて指す「フラップ」の誤訳から生まれたもので、混乱を招くため、使用は避けられています。

植皮術の目的: 植皮術の主な目的は、患部の機能回復です。整容的な改善も目的とされる場合もありますが、適応となる症例は限られています。分層植皮は創傷の早期閉鎖に、全層植皮は拘縮の解除に有効です。

他家移植: 広範囲の熱傷など、患者の皮膚採取が困難な場合、スキンバンクの凍結同種皮膚や家族からの皮膚を用いた緊急的な植皮が行われることがあります。これらの同種移植皮膚は、一時的な処置として用いられ、1週間から10日間で脱落します。その間に、患者の皮膚を培養し、その後、培養した皮膚を植皮します。培養には、NIH3T3細胞などの技術が用いられることもあります。

関連項目: 外科学、皮膚科学、整形外科学、形成外科学、デブリードマン、重度熱傷、瘢痕、拘縮、熱傷、ケロイド、肥厚性瘢痕

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