検察側の罪人

検察側の罪人

概要

『検察側の罪人』（けんさつがわのざいにん）は、日本の作家・雫井脩介による小説です。作品は『別册文藝春秋』の2012年9月号から2013年9月号まで連載され、2013年には文藝春秋から単行本が刊行されました。この作品は「時効」をテーマに、検事という職業を中心にストーリーが展開します。著者は元検察官の郷原信郎に取材を行い、リアルな法廷の現実を盛り込んでいます。

本作は、2013年の『週刊文春ミステリーベスト10』国内部門で4位、また宝島社の『このミステリーがすごい! 2014年版』で8位に選ばれるなど、評価されています。文芸評論家の郷原宏は、現行の司法制度における問題点を指摘し、「すぐれて社会的な司法ミステリー」として評価しています。

あらすじ

物語は、検事4年目の沖野啓一郎が東京地検刑事部に配属され、上司である最上毅との関係から始まります。沖野は、最上の教え子であり、彼の流儀への憧れを抱いています。2012年4月、大田区蒲田で老夫婦の刺殺事件が発生し、捜査が進む中、最上は33年前の女子高校生絞殺事件の有力容疑者である松倉重生の名を発見します。松倉は当時証拠不十分で逮捕されなかった男であり、最上は彼が真犯人だと確信しています。

沖野の事務官、橘沙穂は、大学時代にキャバクラ潜入ルポを執筆した経験を持ち、現在は沖野に好意を抱いています。捜査が進む中、松倉は老夫婦刺殺容疑を否認し続け、最上は松倉を法のもとで死刑にするために躍起になります。しかし、沖野はその方法に疑問を持ち始めます。

新たな容疑者である弓岡嗣郎が浮上し、最上は松倉が無罪になることを恐れて弓岡に接近します。最上は弓岡を殺害し、その遺体を隠します。一方、沖野は松倉を冤罪にすることに耐えられず、最上を辞める覚悟を固め、松倉の国選弁護人に情報を提供します。しかし、弓岡の共犯者が自首し、松倉の無罪が確定します。

沖野は、無罪の松倉を祝うパーティーに参加しますが、厳しい取り調べを行ったことで松倉は怒りを爆発させます。結果、松倉は暴走自動車にはねられ死亡します。物語は、最上から渡された資料から、国家の巨悪の実態に直面する沖野の決断へと進展します。最終的に沖野は、真実を追い求める過程で最上が罪人であると断言し、彼と対峙します。

登場人物

• - 最上毅: 東京地検の検事。
• - 沖野啓一郎: 最上の部下で新人検事。
• - 松倉重生: 老夫婦刺殺事件の容疑者で、23年前の女子高校生殺人事件でも疑いを持たれる。
• - 橘沙穂: 沖野の事務官で、沖野に恋心を抱く。
• - 弓岡嗣郎: 新たな容疑者。

書籍情報

単行本は2013年9月に文藝春秋から発行された後、2017年には文春文庫にて文庫[[本]]も刊行されています。最近では、2018年に映画化され、木村拓哉と二宮和也が主演を務めました。

この作品は、検事や法廷のリアルな描写と、犯罪の背後にある人間ドラマを描くことで、読者に深い印象を残すミステリー作品となっています。

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