楯築遺跡

楯築遺跡：日本最大級の弥生墳丘墓

岡山県倉敷市矢部に位置する楯築遺跡（たてつきいせき）は、弥生時代後期後葉（2世紀後半）に築造された巨大な墳丘墓です。その規模は弥生墳丘墓としては日本最大級を誇り、国の史跡にも指定されています。

遺跡の概要

楯築遺跡は、直径約49メートル、高さ4～5メートルの不整円形の主丘を主体とし、北東と南西に方形の突出部を持つ双方中円形をしています。全長は推定83メートルにも及びます。主丘は盛り土によって築かれ、その内部には精巧な埋葬施設が複数確認されています。

遺跡の調査史

この遺跡に関する記録は古く、17世紀初頭には既に「楯山」という地名で文献に現れ、墳丘上の立石が楯と認識されていた可能性が示唆されています。その後、神社が建立され、温羅伝説などとも結び付けられてきました。近代以降は本格的な考古学調査が行われ、弥生時代の巨大墳墓であることが明らかになりました。

しかし、1970年代初頭には宅地造成工事によって北東側の突出部がほぼ完全に破壊されてしまいました。南西側の突出部も一部が破壊され、給水塔が建設されるなど、遺跡の保全が課題となりました。

発掘調査

1976年から1989年にかけて、岡山大学考古学研究室と倉敷市教育委員会を中心とした発掘調査が7次にわたって実施されました。これらの調査によって、主墳内部の木棺、副葬品、排水施設、そして複数の埋葬施設などが発見され、弥生時代の社会構造や葬祭儀礼に関する貴重な知見が得られました。

特に、中心埋葬施設からは、長さ約2メートル、幅約0.7メートルの木棺が出土しました。棺底には大量の朱が敷かれ、鉄剣、首飾り、ガラス玉などの副葬品も発見されています。もう一つの埋葬施設も確認されていますが、副葬品は少ないものでした。

遺構と遺物

墳丘: 主丘と、かつて存在した2つの突出部からなります。突出部は、石列や、朱塗りの壺型土器が配列されていたと考えられています。

立石・列石: 主墳頂上には複数の巨石が立ち並び、斜面にも列石がめぐらされています。

埋葬施設: 主墳には少なくとも2基の埋葬施設が確認され、中心埋葬施設は木棺と木槨からなり、副葬品を伴っていました。

遺物: 弥生土器、特殊器台、特殊壺、土製品、鉄器、玉類など、多様な遺物が発掘されています。中でも注目されるのは、神社弧帯文石です。

神社弧帯文石

神社弧帯文石は、楯築神社に伝来していた、全表面に弧帯文様が刻まれた石で、国の重要文化財に指定されています。この石は、弥生時代の葬送儀礼との関連性が指摘されており、遺跡の重要性を高めるものです。

文化財指定

楯築遺跡は1981年に国の史跡に、神社弧帯文石は1982年に国の重要文化財に指定されました。

まとめ

楯築遺跡は、その規模、埋葬施設の構造、出土遺物の多様性などから、弥生時代の社会構造や文化を理解する上で極めて重要な遺跡です。発掘調査によって明らかになった知見は、日本の古代史研究に大きく貢献しており、今後もさらなる研究が期待されています。 この遺跡は、古代日本の歴史と文化を垣間見ることができる貴重な場所と言えるでしょう。

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