極東博物館

ベルギーの秘境：極東博物館ものがたり

ブリュッセルのラーケン地区にひっそりと佇む極東博物館。その存在は、ヨーロッパの喧騒とは無縁の、静謐な東洋の息吹を感じさせます。日本と中国の工芸品を収蔵するこの博物館は、ベルギー王立美術歴史博物館に属し、独特の建築様式と歴史的背景を持つ、知る人ぞ知る存在です。

レオポルド2世の壮大な夢

博物館の起源は、ベルギー国王レオポルド2世の植民地政策にまで遡ります。アジアやアフリカへの関心を高めるため、彼はアジア・アフリカに関する屋外民俗博物館の建設を構想。その構想は、パリ万博で目にした五重塔の移築という具体的な計画へと発展しました。

フランス人建築家アレクサンドル・マルセルによって設計された日本風の五重塔は、1901年に設計図が購入され、1904年に完成。翌年には公開されました。横浜の職人が手がけた装飾の一部と、西洋人の技術が融合した、独特の和洋折衷様式が魅力です。

レストランとして計画された中国館

五重塔に続く建造物として、賓客を迎えるためのレストランとして中国館の建設が1903年に計画されました。これもマルセルによる設計で、パリ万博のパビリオンの解体部材や上海からの発注品などを活用して建設が始まりました。しかし、屋外博物館計画の中止により、1905年に一旦建設は中断されました。

ベルエポック調の豪華な内装が施された中国館は、レストランとして使用されることはありませんでしたが、1909年にレオポルド2世が死去した後、国に寄付され、1913年に完成をみました。

紆余曲折を経て東洋美術の殿堂へ

完成後、外務省が管轄する博物施設として使用されていましたが、1947年以降は閉館、放置されたままの時が流れていきました。しかし、1989年、改装工事が行われ、東洋美術の展示会場として再びその姿を現しました。

さらに2006年には、1903年に中国館の横に建てられたマルセル設計の建物を改装し、日本館がオープン。鎧兜や浮世絵など、日本の美術品が展示されるようになりました。

現在、五重塔、中国館、日本館、そして日本の植物が植えられた日本庭園を一体として、極東博物館は一般公開されていました。しかし、2017年6月現在、改修工事のため閉鎖されています。

再開への期待

レオポルド2世の夢から始まり、幾多の困難を乗り越えてきた極東博物館。その歴史と、和洋折衷の建築、そして貴重な東洋美術の数々は、再開を待ち望む人々の心を掴んで離しません。改修工事が終わり、再びその扉が開かれた時、私たちは東洋の息吹を肌で感じることができるでしょう。

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