極相

極相（クライマックス）とは

極相（きょくそう、英語: climax）とは、生物群集の遷移の最終段階に見られる、安定した平衡状態を指す言葉です。特に植物群集において、遷移が進むにつれて植生は複雑化し、好条件下では森林が形成されます。日本の森林では、一次遷移・二次遷移に関わらず、最終的には陰樹が優占するようになります。例えば、落葉樹林ではミズナラやブナなどがその代表例です。森林の樹木群集がほぼ陰樹で構成され、樹種構成が大きく変化しない状態を「極相に達した」と表現し、その森林を極相林と呼びます。また、極相林に生育する樹木を極相種と言います。

しかし、樹木の定着や成長は気候や土壌などの環境要因に左右されるため、必ずしも陰樹が優占するとは限りません。乾燥や低温などの厳しい条件下では、草原が極相となる場合もあります。気候帯ごとの植生を説明する際には、その極相をもって示すことが一般的です。

極相に関する考え方

同一気候帯では最終的に単一の極相に至るとする考え方を単極相説と呼びます。一方、地形などの条件によって異なる植生が極相として成立し得るとする立場を多極相説と言います。

極相に達した状態でも、幹の折損や倒木によって生じるギャップでは、豊富な光量や地温を利用して陽樹が侵入・定着することがあります。そのため、極相は静的な状態ではなく、「動的な平衡状態」にあると捉えるのが適切です。この考え方は、現在の森林を理解する上で欠かせない視点となっています。ギャップの形成とその影響を含めた森林の動態は、ギャップダイナミクスと呼ばれています。

原生林と原始林

極相林に関連する言葉として、原生林と原始林があります。原生林とは、極相に達した後、ある程度の期間にわたり人為的な攪乱を受けていない森林を指します。極相林の植物が揃った後も、樹木は成長を続け、大径木でなければ生息できない動物も存在します。森林内の環境は、ゆっくりとではありますが変化し続けると考えられます。一方、原始林とは、有史以来ほとんど人為的な攪乱を受けていない森林を指す言葉です。

まとめ

極相は、生物群集の遷移における最終的な安定状態であり、森林においては陰樹が優占する状態を指します。ただし、気候や土壌などの環境条件によって、極相となる植生は異なることがあります。また、極相は静的な状態ではなく、ギャップ形成などの動的な要素も含む、複雑な平衡状態であると理解することが重要です。



関連用語
* 潜在自然植生

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