極軸望遠鏡

極軸望遠鏡とは

極軸望遠鏡（Polar Scope）は、赤道儀式架台の極軸に組み込まれた小型の望遠鏡です。この望遠鏡は、天体観測や撮影において、赤道儀の極軸を天の極（北極星付近）に正確に合わせるために使用されます。

極軸望遠鏡の必要性

赤道儀式架台は、天体を追尾するために極軸を天の極に向ける必要があります。この極軸合わせを正確に行うことで、天体の動きに合わせて望遠鏡を回転させることができ、長時間の観測や天体写真撮影が可能になります。極軸望遠鏡は、この極軸合わせをより簡単かつ精度良く行うために不可欠なツールです。市販の多くの赤道儀には、極軸望遠鏡が標準装備されているか、オプションとして利用できます。

北半球での極軸望遠鏡の使用法

1. おおまかな設置: まず、方位磁針などで北の方角を把握し、その方向におおよそ極軸が向くように赤道儀式架台を設置します。地面が柔らかい場合は、架台が沈み込まないように注意してください。
2. 極軸望遠鏡の調整: 極軸望遠鏡を覗き、視野内の星やスケールが鮮明に見えるように、接眼レンズ付近の視度リングを調整します。
3. 北極星の導入: 極軸望遠鏡の視野内に北極星を導入します。北極星の位置が分かりにくい場合は、片目で極軸望遠鏡を覗きながら、もう片方の目で北極星を確認し、視野の中心に合わせます。
4. 精度向上: 極軸望遠鏡にはスケールが内蔵されており、これを利用することでさらに精度を高めることができます。スケールの方式はメーカーによって異なり、時角方式や位置関係方式があります。
時角方式: 星が日周運動で動く方向を、時計の文字盤のように時角で表します。星座早見盤などで北極星の時角を求め、極軸望遠鏡のスケールでその方向に合わせます。一部の赤道儀には時角を求める機構が内蔵されています。
位置関係方式: ケンコーや五藤光学研究所のように、北極星以外の星を利用して、水平出しの調整を不要とする方式もあります。

極軸合わせの重要性

極軸の精度が低いと、天体を追尾中にズレが生じ、観測や撮影に影響が出ます。特に、長時間の観測や天体写真撮影では、極軸の精度が非常に重要になります。精度が低いと、天体の動きを極軸の微調整だけでは追尾できず、赤緯微動による修正が必要になる場合があります。極軸望遠鏡を使用してもズレが大きい場合は、メーカーに修理を依頼する必要があります。

まとめ

極軸望遠鏡は、天体観測や撮影において、赤道儀式架台の極軸を正確に合わせるための重要なツールです。適切に使用することで、長時間の観測や天体写真撮影をより快適に、そして精度良く行うことができます。極軸望遠鏡を活用して、天体観測の楽しみを深めてください。

参考資料

西条善弘・渡辺和明『天体望遠鏡ガイドブック』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28909-X
天文ガイド編『増補天体写真テクニック』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28706-2
* 天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'75年版』地人書館

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