榊原昭二

榊原 昭二

1927年9月4日、愛知県に生まれた榊原昭二（さかきばら しょうじ）氏は、日本のジャーナリスト、そして著述家として知られています。

東京大学法学部を卒業後、朝日新聞社に入社。ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。社会部次長、さらには編集委員として、当時の社会の動きや世相を鋭く捉え、多くの記事を執筆しました。新聞記者としての現場経験は、その後の氏の著述活動にも大きな影響を与えています。

新聞社での長年の経験を経て、新潟大学の教授に就任。ジャーナリズムや社会、文化に関する教育・研究活動にも従事しました。教育者としての顔も持つ榊原氏は、次世代に知見を伝えることにも力を注ぎました。

榊原氏の活動は、単なる報道の枠を超え、幅広いテーマに関する著作活動として結実しています。特に「言葉」と「世相」への深い関心は、氏の著作の大きな特徴です。1980年代初頭から、『ことろぐ. 新語・世相語・流行語』や『'80年代世相語ガイド』といった書籍を通じて、時代を映し出す新語や流行語、そしてそれに伴う社会の変化を丹念に追いました。『現代世相語辞典』や『昭和語 60年世相史』では、さらに広範な視点から言葉と歴史の関係性を掘り下げ、昭和という時代の流れを「言葉」という切り口から読み解こうと試みています。

言葉そのものへの探求は続き、『娯用誤用事典』では言葉の誤用や慣用句の面白さに光を当て、『ことばのトレンディ』『語感問答』『や、これは面白い!ことばのQ&A』『ことばつれづれ』『だから言葉は面白い』といった作品群を通じて、言葉の持つ奥深さや、コミュニケーションにおける言葉の役割について、軽妙かつ insightful に論じています。

ジャーナリストとしての経験は、ノンフィクション作品にも生かされています。『新聞記者 ペンをとる手に涙のしずく』は、記者という職業の内側を描いたものであり、氏自身の経験や哲学が反映されている可能性がうかがえます。また、『沖縄・八十四日の戦い』では、特定の歴史的出来事、特に沖縄戦という激戦に焦点を当て、綿密な取材に基づいた筆致でその実像に迫りました。これは後に岩波同時代ライブラリーにも収録されるなど、その歴史的意義が評価されています。『キーワードで読む戦後史』もまた、戦後日本の歩みを象徴する「キーワード」を通じて解説するという、氏ならではの視点から歴史を読み解く試みです。

単著だけでなく、共著や編著にも積極的に携わっています。例えば、『朝日新聞「かたえくぼ」の三十三年 戦後世相散歩』では、長年にわたる新聞連載を通じて戦後日本の世相を振り返り、『図説にっぽんの役所』全12巻では、日本の行政機構を詳細に解説する大部の企画に携わりました。さらに、三杉隆敏氏との共編著である『海のシルク・ロード事典』や『陶磁器染付文様事典』は、海洋史や美術史といった専門分野にも氏の関心が広がっていたことを示しています。

このように、榊原昭二氏は、ジャーナリストとして社会の動きを捉え、教育者として知識を伝え、そして著述家として「言葉」や「世相」、さらには歴史や文化といった多岐にわたるテーマを探求し続けた、多角的な活動を展開した人物と言えるでしょう。

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