榛名山美術研究所

榛名山美術研究所について

榛名山美術研究所（はるなさんびじゅつけんきゅうじょ）は、群馬県の榛名湖のほとりに設立を計画した美術施設です。この構想は、かの有名な画家竹久夢二（1884 - 1934）によって提唱されました。彼は明治末から大正にかけて活躍した美人画の巨匠で、大正ロマンの代名詞ともして知られていますが、実際にはこの美術研究所は未完に終わりました。

竹久夢二の背景

夢二は、その作品が雑誌『中学世界』に掲載された1905年に注目を浴び、その後は多くのファンを魅了しました。特に、伊香保町での出来事が彼に大きな影響を与えたことがあります。12歳のファンからの手紙がきっかけで、彼はその場所を訪れるようになります。人気の絶頂期を迎えた夢二でしたが、大正末期に彼の名声は急速に衰退していきました。

彼の人気が落ち込んだ要因には、経済不況とともに、彼自身の私生活へのスキャンダルが影響したとされています。この頃、彼は経済的に困難な状況に陥りながらも、創作活動を続けていました。

美術研究所の構想

1930年頃、夢二は伊香保温泉で長期滞在し、その際に榛名湖の近くにアトリエを設置しました。代表作の一つである『榛名山賦』もこの時期に制作され、春の女神を題材にした美しい絵が描かれています。彼はその作品を通じて、自身の美術観を表現し、榛名湖の美しさを詠んでいます。

夢二は、商業主義の流行が美術に与える影響を憂慮し、俗世から隔絶された場所での創作活動を望んでいました。榛名湖畔に美術施設を設けて、生活と美術が融合する空間を作りたいと考えていたのです。この構想は、夢二が公私ともに厳しい状況であった際の、造形的な「隠れ家」を求めていたことを反映したものです。

資金調達と挫折

夢二の構想を支持したのは、地域の文化人や実業家たちでした。高崎市の実業家、桜井伊兵衛が土地を提供し、島崎藤村や藤島武二など知れ渡った名前たちも賛同しました。彼らは「美術研究所」設立のための資金を集めるイベントを開催しました。群馬県内の各地で行われたこのパーティーでは、一定の資金が集まったものの、夢二はその後海外へ視察に出かけます。

しかし、夢二はその旅行中に病に倒れてしまい、帰国直後に命を落としてしまいます。結果として、榛名湖畔に計画された美術研究所は、実現することなく夢のまま終わってしまいました。

夢二の遺産と記念館

竹久夢二の業績は、後世においても評価され続けています。1979年には伊香保温泉に竹久夢二伊香保記念館が開設され、彼の作品や業績が紹介されています。また、榛名湖周辺でも1989年に「湖畔の宿記念公園」が整備され、その中に夢二のアトリエが再現された展示が行われています。

このように、榛名山美術研究所の未完成の計画は、夢二の人生と芸術における試行錯誤を物語っており、彼の美術への情熱と願望が人々に影響を与え続けていることを示しています。

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