樂翠亭美術館

樂翠亭美術館：昭和初期の趣ある空間で現代美術を味わう

富山県富山市奥田新町に位置する樂翠亭美術館は、陶芸や工芸を主とした現代美術を展示する美術館でした。2004年に株式会社アイザックが取得し、2011年に開館。戦後建築の日本家屋と洋風家屋、蔵、そして回遊式日本庭園からなる、約1,149坪の広大な敷地を誇っていました。

歴史と建築：取り壊しの危機を乗り越えて

美術館の建物は、1950年以降に建てられた日本家屋、2階建ての洋風家屋、蔵などから構成され、富山市を代表する昭和初期の貴重な建築物でした。しかし、2000年代初頭には取り壊しの危機に瀕していました。アイザックによる取得と改修を経て、ゲストハウスとして利用された後、2011年5月22日、富山駅北地区の活性化を願って美術館として生まれ変わりました。

美術館の名称「樂翠亭」は、庭園内の東屋に京都西本願寺の光照門主（勝如上人）が命名したものです。「樂翠」は緑を楽しむという意味を持ち、美術館の雰囲気を表すのにふさわしい名前と言えるでしょう。ロゴマークはアートディレクターの佐藤可士和氏によるデザインです。

展示室：趣向を凝らした空間

美術館は、複数の展示室と日本庭園から構成されていました。

1階: 受付、ミュージアムショップ、テラス、無料駐車場（10台）に加え、展示室1と檜風呂がありました。展示室1は漆の天井と赤い壁が特徴的な2間続きの和室で、庭園を眺めながら檜風呂に浸かることもできました。

展示室2: 2間続きの本座敷と館内茶室「碧庵」を繋ぐ中庭回廊は、貴重な屋久杉の一枚板を用いた天井が特徴でした。庭園に面した縁側や中庭回廊の床板も、欅や肥松の一枚板を使用するなど、細部までこだわった造りでした。欄間は井波彫刻師2代目南部白雲作の日本三景を立体的に掘り込んだものでした。

館内茶室「碧庵」: 2013年の企画展で作家たちによって命名された茶室で、貴重な南天の木を床柱に使用していました。

展示室3と4: 1953年に増築された展示室で、それぞれ欅の堀テーブルや、ふすまに「らくすい」と描かれた特徴がありました。

展示室 蔵: 元は2階建てでしたが、天井を抜いて1層構造に改修されました。壁内部の塗装には、着物地の染料が使用されていました。

2階: 特別展示室（当初はギャラリー&カフェ）がありました。

日本庭園：心安らぐ空間

回遊式日本庭園には、光照門主が命名した東屋「樂翠亭」や鯉の池があり、各展示室から鑑賞したり、自由に散策したりすることができました。

休館と今後の展開

建物の老朽化のため、2023年11月以降休館していました。その後、建物は解体され、敷地の多くはマリモによって取得され分譲マンション建設に使用される予定です。アイザックは、富山市内の別の場所に新美術館を建設することを検討しており、「樂翠亭」の名前を受け継いだ美術館の再開が期待されています。

アクセス

JR富山駅北口から徒歩約10分、富山地方鉄道富山港線インテック本社前停留場から徒歩約5分、市内周遊ぐるっとバス「樂翠亭美術館」バス亭すぐ、北陸自動車道富山ICから車で約20分とアクセスも良好でした。

樂翠亭美術館は、貴重な建築と現代美術、そして美しい日本庭園が調和した、魅力的な美術館でした。再開が待ち遠しいです。

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