樋渡達也

樋渡 達也

日本の造園家、行政プランナー。1931年2月6日生まれ。長年にわたり東京都職員として公共造園事業の最前線に立ち、特に東京湾の海上公園構想を推進した先駆者として知られる。退職後も数多くの公的機関や造園関連団体の要職を歴任し、教育活動や著作活動を通じ、日本の造園・ランドスケープ分野の発展に多大な貢献を続けている。日本造園学会名誉会員、登録ランドスケープアーキテクト（RLA）フェロー。

生い立ちと学歴

東京・青山に生まれ育つ。1945年8月、父親の転勤により滞在していた広島で被爆。終戦後東京に戻り、東京都立園芸高等学校を経て、新制大学として開学した千葉大学園芸学部造園学科に進学し、1954年に卒業した。

東京都職員としての軌跡

大学卒業後、一時的な期間を経て1956年に東京都庁に臨時職員として入庁、翌年に正式採用される。最初の8年間は多摩動物公園の建設担当として現地に駐在し、その基礎を築いた。その後は丸の内の建設局、港湾局、都市計画局などの中枢部門でキャリアを重ねる。特に都市計画局では、東京湾の海上公園計画、代々木公園計画、八王子霊園計画といった大規模な公共緑地事業に深く関与した。沖縄東京の塔、花博（花の江戸東京館館長）なども担当し、最終的には公園緑地部長の要職を務めるに至った。これらの経験を通じて、行政の立場から都市の緑地空間を創出・整備する行政プランナーとしての手腕を発揮した。

専門分野での活動と学会貢献

都庁勤務の傍ら、専門分野での活動も精力的に行った。『ジャパンランドスケープ』誌の編集委員として造園に関する論議や情報発信に携わった。また、造園家・池原謙一郎氏の作品にエンジニアとして協力したり、代々木公園設計者選定コンペティションにおいて池原氏を含むチームの一員として取り組んだりするなど、実務家・研究者との連携も深めた。その後、池原氏の代理で筑波大学の講義を担当するなど、教育活動にも足を踏み入れた。
日本造園学会には1956年から長期間所属し、1981年から1985年まで企画担当常務理事、1988年から1993年まで関東支部支部長を務めるなど学会運営にも貢献した。2001年以降は名誉会員となっている。

退職後の広範な社会貢献

1990年に東京都を退職した後も、その豊富な経験と知見を活かし、多岐にわたる公的機関や団体で重要な役割を担った。1990年から（財）東京フロンティア協会審議役、1996年から1998年まで（財）東京都公園協会常任理事を務めた。
さらに、文化財指定庭園保護協議会会長（2010年まで）やみどりの提言賞審査委員、武蔵野文化協会理事長などを歴任。東京都公園審議会副会長、景観審議会景観基本軸部会長、自然環境保全審議会臨時委員といった行政の諮問機関の委員としても重責を担った。その他にも、日本公園緑地協会理事、日本造園修景協会常務理事、財団法人東京動物園協会評議員、葛西臨海水族館運営委員会委員、東京都造園緑化業協会副会長、日本ランドスケープフォーラム顧問など、造園、緑地、環境、文化、動物園など幅広い分野の各種団体で役員を務め、日本の緑豊かな環境づくりと文化の発展に寄与した。

教育活動と著作

次世代の造園家・ランドスケープアーキテクト育成にも熱心であり、建設大学校、東京農業大学、千葉大学、筑波大学、武蔵野美術大学など、複数の大学で長年にわたり非常勤講師として教鞭を執った。
また、自身の経験や研究成果を広く伝えるため、活発な著作活動を行った。『東京の港と海の公園』など単著の他、『造園の事典』『水辺のリハビリテーション』を始めとする多くの専門書において、編著や共著、執筆担当として名を連ねている。これらの著作は、専門知識の普及や後進の研究に大きな影響を与えた。

受賞

長年の功績は高く評価され、複数の権威ある賞を受賞している。1979年に昭和53年度日本造園学会賞、1983年に第5回日本公園緑地協会北村賞、1988年には建設大臣表彰を受賞した。さらに、2002年には平成14年度日本造園学会賞上原敬二賞を受賞している。

樋渡達也氏は、東京都の行政官として大規模公共緑地事業を牽引した経験を基盤に、退職後も教育、学会、業界団体、各種委員など多方面で指導的な役割を果たし、日本の造園およびランドスケープ分野の発展に比類なき貢献を遂げた人物である。

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