樋越川

樋越川と新樋越川の歴史

樋越川（ひごしがわ）は京都府京丹後市網野町小浜に存在する、1676年（延宝4年）に掘削された水抜き穴であり、地域の農業と生活において重要な役割を果たしてきました。この水抜き穴は、離湖の水位を安定させるために周囲の農民たちの手によって人力で掘られ、延長647メートルのうち約500メートルが手掘りによるものであることから、日本の土木史に名を残す難工事として知られています。

樋越川の地理的背景

樋越川は江戸時代、小浜の「河続海」と呼ばれていた離湖から日本海へ水を流す目的で作られました。水路は万畳山の下をくり抜く形で構築され、高さ1メートル強、幅1メートル弱という規模です。この水路は開削された後も、多くの砂に埋まってしまうことが多く、そのため1959年（昭和34年）には新樋越川が開削されることとなりました。この新しい水路が完成したことで、離湖の水位がさらに低下し、湖中に存在していた離島が陸と繋がりました。

掘削までの経緯

江戸時代には、離湖に流入する河川は豊富でしたが、排水を行う河川は限られ、特に大雨の際には周辺の田畑が冠水する事態が頻繁に発生していました。水位の低下を願う農民たちは、堀川が砂で埋まる度に労働力をかけて砂を掘り下げていました。こうした背景から、小左衛門と足立久兵衛らが協力し、樋越川の掘削を実現することになったのです。

樋越川の掘削工事

工事は1674年（延宝2年）に始まり、荘厳な自然環境の中での人力作業は、非常に過酷なものでした。海側と山側から同時に掘削が始められましたが、その困難さは想像を絶するものであり、時には北風や岩盤によって作業自体を難しくすることもありました。3年の月日がかかり、工事は1676年に完成しました。地元ではこの水路を「マブ」と呼び親しまれました。完成後は耕地の冠水を防ぎ、地域の農業生産を大いに助けました。

新樋越川の開削工事

時は流れ、1952年（昭和27年）に新樋越川の開削工事が始まりました。この新しい水抜き穴は、樋越川よりも南側の網野町地区で開始され、完成までに導入された機械や新たな技術が大いに活用されました。工事には8年を要し、延べ数万人が従事し、多額の費用が投じられました。1959年に完成した新樋越川は、離湖の水位をさらに下げることに貢献し、地域の冠水被害を軽減させることとなりました。

開削の影響と遺跡の発見

新樋越川の工事中には、古代の遺跡が発見されました。縄文時代の遺物が出土し、考古学的価値も認められています。この発見は、地域の歴史に新たな光を当てる重要なものでした。今後もこの地域の遺産が大切にされ、伝承されていくことが期待されています。

樋越川と新樋越川の歴史は、地域の農民たちの努力の結晶であり、彼らの知恵と工夫が生かされた土地の魅力を伝えています。彼らが残したその水路は、今もなお地域の農業や生活を支え続けているのです。

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