標準の光

標準イルミナント：色の測定における光の基準

標準イルミナントとは、[国際照明委員会]が定めた、色を測るための代表的な照明光のことで、色温度や分光強度分布が厳密に規定されています。「標準の光」とも呼ばれますが、近年は「標準イルミナント」の使用が推奨されています。一方、人工的に標準イルミナントの分光強度分布を再現した光源を標準光源と呼び、これら2つの用語は明確に区別する必要があります。

歴史と種類

CIEは1931年、測色のための標準イルミナントとしてA、B、Cを定めました。Aは白熱電球、Bは直射日光、Cは直射日光を除いた昼光をそれぞれ模倣したものです。これらの定義は、CIE RGB表色系やXYZ表色系の導入と同時に決定されました。

その後、標準イルミナントCが広く使われましたが、自然光とのずれが指摘され、1964年には昼光をより正確に表すD55、D65、D75が追加されました。さらに、等エネルギー光源であるEや、様々な蛍光灯を表すFシリーズなども定義されています。BとCは、より精度の高いDシリーズに取って代わられ、現在は廃止されています。

主要な標準イルミナントの詳細

標準イルミナントA: 白熱電球の光を模倣したもので、色温度は2856K。赤みがかった光です。比較的容易に再現でき、標準光源Aとして用いられます。

標準イルミナントBとC: それぞれ正午の太陽光と、直射日光を除く昼光を模倣したものです。液体フィルターを用いた白熱電球を光源とする標準光源BとCによって実現されました。現在では廃止されていますが、過去の測定データとの互換性のため、一部では未だ利用されています。デイビス・ギブソンフィルターを用いることで再現性が高められていました。このフィルターは、アボットによる太陽光と昼光の分光強度分布の測定値に基づいて設計されました。

標準イルミナントD65: 標準イルミナントCの後継として、昼光をより忠実に再現するために開発されました。色温度は6504Kで、紫外線領域の成分も考慮されています。光源としての再現は困難です。

標準イルミナントE: 理論的な基準として用いられる等エネルギー光源です。可視スペクトル全域で均一な分光分布を持ち、全ての波長に等しい重みを割り当てます。XYZ表色系の設計に深く関わっており、色度座標は(1/3,1/3)となります。黒体ではないため、色温度ではなく相関色温度（5455K）が用いられます。Dシリーズの光源で近似できます。

標準イルミナントと標準光源

繰り返しになりますが、標準イルミナントは分光分布が規定された光の定義であり、標準光源はそれを再現する人工光源です。例えば、標準イルミナントAを再現する光源が標準光源Aです。正確な色測定を行うためには、標準イルミナントと標準光源の特性を理解することが重要です。

測色における重要性

標準イルミナントは、色の測定において非常に重要な役割を果たします。様々な光源下での色の見え方を統一的に評価するために、基準となる光源として、様々な測色システムや機器に利用されています。現代の測色においても、標準イルミナントD65は、昼光を代表する光源として広く利用されています。様々な測定機器やソフトウェアでは、標準イルミナントCのデータも引き続き利用されています。標準イルミナントの理解は、正確な色再現や色管理に不可欠です。

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