標識再捕獲法

標識再捕獲法とは

標識再捕獲法（ひょうしきさいほかくほう）は、動植物の個体群における個体数を評価する手法であり、特に生態学の分野で広く用いられています。この方法では、特定の個体に標識を施し、その後再度捕獲することによって、対象とする集団の個体数を推定します。

個体数推定の必要性

生態学において、自然の動植物のすべての個体を把握し、その数を正確に数えることは非常に困難です。そのため、個体数推定の手法が必要とされます。この方法を利用することにより、完全な個体数（絶対個体数）ではなく、推定される個体数（推定個体数）を得ることができます。さらに、個体数に直接関与せず、密度を推定することができる場合もあり、この場合には密度推定という用語が用いられます。

Petersenによる基本的なモデル

標識再捕獲法の最も基本的な形式であるPetersenモデルは、閉鎖系における個体数を推定するものです。このモデルでは、捕獲の際に個体数は変化しないと仮定し、個体の行動に標識が影響を与えないことも前提としています。

手法は次のように進められます。まず、フィールドからM匹を捕獲し、これらの個体に標識を付けて再びその場所に放ちます。その後、再度捕獲を行い、捕まえた個体数をCとし、その中で標識が付いていた個体をRとすると、以下の数式により全体の個体数Nが推定されます。

$$N = \frac{MC}{R}$$

この式によって、捕獲に使用する個体数が増えるほど、推定値が正確に実測値に近づくことが期待されます。

1回の捕獲に対する改良版

基本的なモデルから派生した改良版も存在し、計算式は少し異なります。この改良版では、捕獲数において統計的に重要な場合（例えば、(M+C)>NかつR>7）に応じて、以下の形式で表現されます：

$$N = \frac{(M+1)(C+1)}{R+1} - 1$$

この改良により、より正確な推定結果を得ることが可能になります。

その他の標識再捕獲法

2回以上の再捕獲を実施するには、統計モデルを用いたアプローチが必要です。例えば、オープンソースの統計解析ソフトウェアRを利用して、ポアソン回帰モデルを適用することがあります。

• - Schnabel法：この方法は、Petersenの推定法を繰り返し適用して個体数を推定します。
• - Jolly-Seber法：非閉鎖系における推定法で、3回以上の捕獲を必要とし、各捕獲において標識が付与された個体の識別が求められます。

これらの手法を実施するためには、専用のプログラム（如MARKやM-SURGEなど）を用いることが推奨されます。

実施における注意点

標識再捕獲法を用いる際には、いくつかの注意点があります。捕獲は無作為に行われるべきであり、捕獲作業や標識の設置が個体の捕獲率に影響を与えることがないように配慮する必要があります。また、標識の重さや色、形状が個体の行動や生活に影響を及ぼす場合もあるため、影響を最小限に抑える工夫が求められます。

この方法は、生態研究や資源管理のために非常に有用であり、環境保護の観点からも重要なツールとなっています。

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