権利の所在が不明な著作物

権利の所在が不明な著作物（オーファンワークス）

権利の所在が不明な著作物とは、著作権の所有者を特定できない著作物のことを指します。英語では「orphan works」と表現され、日本語でも「オーファンワークス」という言葉が使われています。このような現象は、著作者の逝去や、法人・団体の解散後に著作権が不明になる事例が多く見られます。

権利の所在不明の原因

著作権保護制度において、著作者が亡くなった場合、その著作物は一定期間保護されますが、著作権者の遺族や権利譲渡を受けた団体が不明な場合、その作品の使用が制約されます。また、著作者が偽名を使用している場合や、法人が倒産した結果、権利が曖昧になることもあります。特に、1998年の著作権延長法も、著作権を不明確にする要因の一つとされています。

デジタルアーカイブとその課題

現代において、未来に残したい作品をデジタル化し保存するためのデジタル・アーカイブズ事業が進められています。しかし、権利の所在が不明な著作物が多数存在するため、権利に抵触するリスクにより、これらの作品の保存作業が進められないまま放置されています。このような状況が続くことで、作品の物理的媒体が劣化し、消失してしまう危険性が高まっています。

各国の取り組み

アメリカの対応

アメリカでは、著作権法の下で、特に1989年以前の作品に対し、著作権の登録がなされていないと保護が受けられないため、大量の孤児作品が存在します。著作権延長法の制定以降、この問題はより深刻化しており、米国著作権局は2004年から孤児作品に関する調査を行っています。この調査では、孤児作品の問題が急務であると指摘され、相応の努力をもって権利者を特定する必要性が述べられています。

ヨーロッパの動き

EUでは、加盟国に対して著作権法の整備を促す取り組みが行われています。特に、古い著作物の孤児化を防ぐための調査も進められています。ヨーロッパでは、著作権に関する調整が進んでおり、孤児作品に対して前向きな対策を取る機関も存在します。

日本の現状

日本の著作権法では、権利が不明な著作物については文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することで利用が認められます。ただし、権利の所在を探すための相応の努力が求められ、その所在が分からなかった場合のみ裁定が下ります。この制度にも関わらず、著作権者不明の著作物は多く、実際に利用されることは難しいのが現状です。

日本国内の事例

日本国内でも権利の所在が確認できない事例がいくつかあります。たとえば、著作者が知名度を持ちつつも消息不明となった山川純一氏の作品や、コンピュータゲームに関する著作物など、様々なケースが存在します。これらの作品は、著作権者が不明であるため、合法的に利用することができない状況にあり、結果として作品が埋もれる危機にあります。

おわりに

権利の所在が不明な著作物、通称オーファンワークスの問題は、デジタル時代において一層深刻化しています。各国がこの問題にどのように向き合うかが、今後の著作権制度における大きな課題となります。無数の作品が消失することのないよう、早急な対応が求められているのです。

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