権記

『権記』について

『権記』は、平安時代中期に藤原行成によって書かれた日記であり、彼の公職での活動や当時の政治状況を詳細に記した文献です。この作品は、極官の権大納言に由来する名前を持ち、同時に『行成卿記』や『権大納言記』とも呼ばれています。

執筆の背景と時期

この日記が執筆されたのは、藤原道長が全盛を誇る時代で、この時期は権力と政治が宮廷の中で巧妙に運営されていました。特に、蔵人頭としての在任期間中、一条天皇の治世に焦点を当てており、執筆された内容からは当時の政務運営や権力の中心、宮廷内部のさまざまな事象が読み取れます。このため、『権記』は平安時代の政治史を理解するために欠かせない一級の史料とされているのです。

伝存する資料

『権記』は正暦2年（991年）から寛弘8年（1011年）にかけての記録が伝わっており、それに加えて万寿3年（1026年）までの逸文も存在しています。興味深い点として、藤原行成の自筆本は現存していないものの、最も古い写本として鎌倉時代以前に筆写された「伏見宮本」が知られています。この写本は宮内庁書陵部に所蔵されており、重要な文献の一つと言えます。

同時代の日記

『権記』と同じ時期に書かれた他の日記には、藤原実資の『小右記』や、藤原道長の『御堂関白記』があり、これらの文献とも比較されることがよくあります。このような作品を通じて、平安時代の社会や政治、文化についての深い理解が得られます。たとえば、『小右記』は幕府の動向や公私にわたる出来事を記載しており、また『御堂関白記』では道長自身の政治とその周辺事情が描かれています。

参考文献とリソース

『権記』に関する研究は多方面にわたり、多くの著作が存在しています。黒板伸夫の「藤原行成」（吉川弘文館、1994年）は行成の人物像に迫り、また倉本一宏が編纂した「藤原行成『権記』全現代語訳」（講談社学術文庫、2011-2012年）は、現代の読者にとって理解しやすい形で原文を提供しています。さらに、倉本一宏編の『権記 日本の古典』（角川ソフィア文庫、2021年）も有益です。

また、国際日本文化研究センターの「摂関期古記録データベース」では、読み下し文が公開されており、さらなる研究や学習の材料を提供しています。

結論

このように、『権記』は単なる日記ではなく、平安時代の政治、文化、社会の深淵を知るための重要な史料であり、古典文学や歴史研究にとって不可欠な文献と言えるでしょう。

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