横浜市電

横浜市電の歴史と現況

横浜市電（よこはましでん）、または横浜市営電車は、横浜市交通局がかつて運営していた路面電車です。1921年4月1日に横浜市電気局として運行が開始されました。市電は横浜市の主要な交通手段として、主に市中心部を循環する形で運行されていました。その運行スタイルやデザインにおいて特徴的でしたが、1972年には全線が廃止されました。

運行の概要

市電のスタイルについては、青色を基調とした塗装が特徴でした。特に上下青色で窓回りがクリーム色のデザインが一般的でした。市電は多くの路線を持ち、循環系統が主流でしたが、ワンマン運転化が他都市に比べて遅れていました。市電の終わりを迎える直前の1971年にワンマン運転が導入され、翌年には全廃に至りました。

市電の衰退と廃止

戦後の日本では都市の発展と同時に交通需要も大きくなり、市電は交通渋滞と輸送力不足に悩むこととなりました。また、根岸線の開通や交通局の財政状況も市電廃止の一因とされています。1972年に全10系統の運行が終了し、市電はその歴史に幕を下ろしました。廃止に伴い、37両の市電車両が静態保存されましたが、ほとんどは撤去されています。

現在の市電

現在では、いくつかの市電車両が横浜市電保存館や各地に保存されており、その数は全体で10両です。横浜市電保存館には当時の車両や備品が展示され、訪れる人々にその歴史を伝えています。

市電の遺構としては、かつての路線に関連する部分が一部残っており、地区によっては当時の風景を感じることができる場所も存在します。たとえば、御影石の敷石が神奈川大学内などで使用されており、市電の名残を感じられる地点も存在しています。残念ながら、他の都市と異なり、横浜市電は車両が他の都市に譲渡されることはありませんでした。

また、廃止後の一部市電車両は、各種の用途に転用されています。たとえば、久良岐公園に保存されている車両があります。一方で、絵本『はしれ ぼくらのしでんたち』では、廃止後の市電が魚礁として生まれ変わる様子が描かれていますが、実際にはそのような状況は確認されていません。

横浜電気鉄道と市電の成り立ち

横浜市電の前身となる横浜電気鉄道は1904年に開業され、地域の交通の重要な一部として機能していました。その後、事業が拡大し、1921年には横浜市が買収し市営交通としての服務を始めました。この時点で、横浜市電は都市鉄道としての形を整え始め、さまざまな路線が開通しました。

特徴的な車両は、関東大震災や空襲などの災害を経て、運行の中で更新や改良が加えられました。特に1945年の横浜大空襲では、保有車両の多くが焼失し、復興を経て新型車両の導入が行われましたが、戦後の経済状況も影響し、運営には多くの困難が伴いました。

最盛期とその後

市電は1950年代に最大の繁盛を迎え、都市の発展において重要な役割を果たしました。その後、モータリゼーション（自動車交通の増加）が進行する中で、市内のバスとの競争が激化し、経営が厳しくなっていきました。さらにはフィンテレンスによる所得の増加があった一方、公共交通機関としての維持が困難になり、財政的な問題が増大します。

横浜市電は、都市交通網の変化にともなって、経営の見直しやワンマン運転の導入が図られるも、1972年に全廃されるという運命を辿りました。その廃止は、横浜の交通史において一つの大きな転換点であったと言えるでしょう。

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