横浜高等工業学校

横浜高等工業学校（横浜高工）の概要

横浜高等工業学校は、1920年（大正9年）に設立された官立の旧制専門学校です。第一次世界大戦後の高等教育機関拡充政策の一環として、広島高等工業学校と同時に設置されました。略称は「横浜高工」として知られています。

教育理念と特徴

初代校長の鈴木達治が提唱した自由主義と三無主義（無試験、無採点、無賞罰主義）が、同校の教育理念として根付いていました。この理念は、学生の自主性と創造性を尊重し、自由な発想を育むことを目的としていました。

学科構成

創立当初は、機械工学科、応用化学科、電気化学科の3学科で構成されていました。その後、建築学科、造船工学科、航空工学科、電気通信科が順次増設され、幅広い工学分野をカバーする学校へと発展しました。

戦時中の変遷

第二次世界大戦中には、横浜工業専門学校（横浜工専）と改称されました。戦時体制下でも、その教育理念は守られ、多くの技術者を輩出しました。

戦後の改革と現在

戦後の学制改革により、横浜高等工業学校は新制横浜国立大学工学部の母体となり、その歴史に幕を閉じました。卒業生による同窓会「横浜工業会」は、戦後の混乱で一時活動を停止しましたが、2001年に「横浜国立大学工学部同窓会連合」として再編されました。

横浜高等工業学校の歴史

設立までの経緯

1916年12月、神奈川県知事が文部大臣に横浜市への高等工業学校設立を申請しました。県と横浜市からの寄付によって設立費用と校地が確保され、1920年1月19日に横浜高等工業学校が正式に設置されました。

開校と教育活動

1920年4月12日に授業が開始され、同年10月29日には開校式が挙行されました。鈴木校長は開校式で自由主義と三無主義を宣言し、学生たちはこの理念の下で学びました。

関東大震災からの復興

1923年9月1日の関東大震災で校舎がほぼ全壊しましたが、文部省からの名古屋移転命令を拒否し、焼け残りの校舎や仮設校舎で授業を再開しました。1924年3月にはバラック校舎が落成し、復興への第一歩を踏み出しました。

戦時体制下での変革

1944年4月、横浜工業専門学校に改称されました。戦時体制下では、航空機科が新設されましたが、終戦後にはGHQ/SCAPの命令により廃止されました。

新制大学への移行

1949年5月31日、新制横浜国立大学が発足し、横浜工業専門学校は工学部の母体として包括されました。これにより、旧制専門学校としての役割を終え、新たな歴史を刻み始めました。

横浜高等工業学校の遺産

教育理念の継承

横浜高等工業学校の教育理念である自由主義と三無主義は、新制大学にも受け継がれ、学生の自主性を尊重する教育の礎となりました。

同窓会の活動

同窓会は、一時活動を停止したものの、各学科単位・地域単位で活動を継続し、2001年には「横浜国立大学工学部同窓会連合」として再編されました。この同窓会は、卒業生のネットワークを強化し、大学の発展に貢献しています。

校地の変遷

開校から廃止まで、横浜市大岡町の校地を使用し、その後、横浜国立大学工学部に引き継がれました。現在は、横浜国立大学教育学部附属横浜中学校の校舎として使用されており、その歴史を今に伝えています。

関連書籍と外部リンク

横浜国立大学工学部によって編纂された『横浜国立大学工学部五十年史』は、同校の歴史を詳しく知るための貴重な資料です。また、横浜国立大学や関連団体のウェブサイトでは、より詳細な情報を得ることができます。

横浜国立大学
横浜国立大学理工系同窓会「名教自然会」
公益財団法人 横浜工業会
横浜国立大学教育学部附属横浜中学校



横浜高等工業学校は、その自由な校風と先進的な教育理念によって、多くの技術者を育成し、日本の近代工業の発展に大きく貢献しました。その歴史は、現在の横浜国立大学へと引き継がれ、今もなお、その精神は生き続けています。

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