横道世之介

小説『横道世之介』

吉田修一による小説『横道世之介』は、2008年から2009年にかけて『毎日新聞』で連載され、2009年9月に刊行されました。この作品は、東京での大学生活を送る青年・横道世之介と、彼が出会うさまざまな人々との交流を中心に描かれています。特に、青春というテーマが強く前面に打ち出されており、登場人物たちの成長や悩みがリアルに描写されています。

あらすじ

1987年、長崎から上京した横道世之介は、新生活を始めると同時に、大学のサンバサークルに参加します。彼はお人好しな性格のため、次々と様々な人たちと出会い、連携していきます。その中で年上の女性・千春に弟のふりを頼まれたり、世間知らずの富裕層の少女・祥子に振り回されたり、友人の倉持に金を貸したりと、世之介は多忙な日々を過ごします。それぞれの出会いが、彼らにとって大切な青春の思い出となります。

物語は1987年4月から1988年3月の一年間が中心ですが、作品の途中で2003年を舞台に世之介を振り返る視点が挿入され、登場人物たちのその後の生活や成長が描かれる特色を持つのも本作の大きな魅力です。

登場人物

• - 横道 世之介：この物語の主人公で、経営学部に在籍する青年。サンバサークルの一員として活動し、物語を通して成長していく。
• - 倉持 一平：世之介の大学の同級生で、彼との交流を通じて自分の人生を歩み始める。
• - 片瀬 千春：世之介が恋をする年上の女性。彼女との関わりが物語に多くのドラマをもたらす。
• - 与謝野 祥子：裕福な家庭の出身で、世之介を振り回す存在。彼女との関係は、世之介に様々な新しい視点を与える。
• - 小暮 京子や川上 清志など、他にも魅力的なキャラクターが登場し、世之介の成長をサポートする。

映画化と評価

この小説は2013年に映画化され、大ヒットを記録しました。映画では主人公・世之介を演じた高良健吾と、ヒロイン・祥子を演じた吉高由里子の演技が高く評価されました。映画化に際しては『南極料理人』の監督、沖田修一がメガホンを取り、脚本も手がけたことにより、原作のエッセンスがしっかりと反映されています。

映画は多くの映画祭に出品され、いくつかの賞を受賞。また、モニター試写では多くの参加者がこの作品を薦めたいと回答し、観客動員も好成績を収めました。

続編の登場

小説『横道世之介』の続編として『続横道世之介』が2019年に発表され、さらに世之介の成長を描き続けています。作品は、彼が24歳の時を舞台にし、1993年から2020年の東京五輪に至るまでの人生を描写しています。

賞と反響

本作は柴田錬三郎賞を受賞し、書評や読者からの評価も高く、日本の現代文学における重要な作品と位置付けられています。読者は、世之介の純真さや周囲との関わりを通して描かれる人間関係の深まりに共感を抱きやすく、作品の持つメッセージ性も強く印象に残ります。今後も世之介の物語は、多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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