橋幸夫傑作集

橋幸夫傑作集

『橋幸夫傑作集』は、昭和35年（1960年）12月20日に、ビクターレコードよりリリースされた橋幸夫の25cmLPレコード（品番：LV-171）です。これは、橋幸夫にとって初めてのアルバムであり、彼のキャリアの記念碑的な作品と言えます。

概要

1960年7月、「潮来笠」（作詞：佐伯孝夫、作曲：吉田正）で鮮烈なデビューを飾った橋幸夫は、その年だけで4枚ものシングルを立て続けに発表するなど、精力的な活動を展開しました。その後も彼の勢いは衰えることなく、年間10数枚という驚異的なペースでシングルをリリースし続け、結果的に『橋幸夫傑作集』（全9集）や『橋幸夫ステレオハイライト』（全7集）など、30種類を超える豊富なベストアルバムが制作されることになります。

本作『橋幸夫傑作集』は、デビューからわずか半年という短期間でのリリースですが、これは当時の彼の人気と、発表する楽曲のほとんどがヒットを記録した事実を反映しています。実際、デビュー後およそ10年間にわたって、橋幸夫のシングルはほぼ全てビクターヒット賞を受賞するほどの成功を収めていました。そのため、このアルバムは単なるベスト盤というより、当時の売れ筋シングルを集めた「シングルコレクション」としての性格が強いと言えます。

アルバムに収録されているのは、デビューした1960年に発表されたシングルのうち、1枚目から4枚目までのA面・B面楽曲、合計8曲です。同年12月にリリースされた5枚目のシングル「木曽ぶし三度笠」は、本作ではなく、続く『橋幸夫傑作集 第2集』に収録されました。

収録曲

本アルバムに収録されている楽曲は、すべて1960年内に発表され、ビクターヒット賞を受賞した初期の代表曲です。デビュー曲である「潮来笠」は、第2回日本レコード大賞の新人賞にも輝いています。

潮来笠（c/w 伊太郎旅唄） [1960年7月5日発売]
あれが岬の灯だ（c/w 君恋い波止場） [1960年8月20日発売]
おけさ唄えば（c/w 逢いたいぜ） [1960年10月5日発売]
喧嘩富士（c/w 流転がらす） [1960年11月5日発売]

シリーズ展開

『橋幸夫傑作集』は、この第1集を皮切りにシリーズ化され、第9集まで制作されました。なお、シリーズ名に「第○集」というナンバーが付記されるのは、第2集以降となります。また、同時期には30cmLP盤による別のベストアルバムシリーズ『橋幸夫オールヒットメロディ』集も並行して発売されています。

シリーズ各集（第2集〜第9集）の概要

以下に、『橋幸夫傑作集』シリーズの第2集から第9集までの発売時期と主な収録曲を記します。

傑作集 第2集（LV-210） 1961年8月発売
A面：木曾ぶし三度笠、花の白虎隊、わが生涯は火の如く、磯ぶし源太
B面：南海の美少年(天草四郎の唄)、緋桜ふぶき、故郷の花はいつでも紅い、新三ひとり旅

傑作集 第3集（LV-222） 1961年11月発売
A面：沓掛時次郎、明日を呼ぶ港、故郷の灯は消えず、すっとび仁義
B面：東京の美少年、あばれ天竜、振り向いたあいつ、浮名の渡り鳥

傑作集 第4集（LV-249） 1962年4月発売
A面：北海の暴れん坊、いで湯恋しや、俺ら次郎長、花の兄弟
B面：江梨子、喧嘩旅、兄弟鴉、悲恋の若武者

傑作集 第5集（LV-276） 1962年9月発売
A面：慕情のワルツ、悲しき天使、雲と三度笠、中山七里
B面：若いやつ、おぼろ月夜の三度笠、大学の青春、美少年忠臣蔵

傑作集 第6集（LV-301） 1962年12月発売
A面：いつでも夢を、あした逢う人、成田おどり、わが胸に歌は消えず
B面：成田の花太郎、すずらん娘、風の三度笠、雲が呼んでる

傑作集 第7集（LV-332） 1963年5月発売
A面：舞妓はん、花の折鶴笠、太陽の街、玄海千鳥
B面：北海の流氷、風流数え唄、若いこだま、祇園ブルース

傑作集 第8集（LV-338） 1963年8月発売
A面：若い東京の屋根の下、箱根山、俺は流れ鳥、瞼の母
B面：お祭り小僧、東京ギター、今宵の夢に、夜のブルース

傑作集 第9集（LV-364） 1963年12月発売
A面：白い制服、通天閣の灯、お嬢吉三、関の弥太っぺ
B面：若い歌声、芸魂、薩南健児の歌、新博多どんたく

『橋幸夫傑作集』シリーズは、初期の橋幸夫の驚異的なヒットメーカーぶりと、発表した楽曲がいかに当時の人々に受け入れられていたかを示す貴重な資料となっています。特に本作は、その勢いの始まりを捉えた記念碑的なアルバムと言えるでしょう。

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