橋本敬三

橋本敬三と操体法の誕生

生い立ちと学歴

橋本敬三は1897年に福島市に生まれました。1921年に新潟医専を卒業した後、同校の生理学教室で研究を続け、1923年には東北帝大医学部に進学し、藤田俊彦教授の指導を受ける中で生理学を専攻しました。

函館での活動

1926年、橋本は函館の民間病院に赴任しましたが、すぐにその病院は閉院となります。その後、1927年には函館市の学校衛生技官として、屋内運動場の防塵法の開発に取り組みました。1929年には新しく開設された民間病院で外科を担当し、1933年には独立して自身の診療所を開設します。

この函館時代には、正體術を高橋迪雄の弟子である奥村隆則から学び、これが後に操体法の基礎となりました。橋本はこの時期、「医療においても民間療法を取り入れる必要がある」との考えに至り、痛みを伴わない治療方法を模索し始めました。患者が民間療法に頼る理由を考え、従来の医学にとどまらない治療アプローチを求めた結果、「操作することで体の自然な歪みを整える方法」が必要であると気づいたのです。

仙台での活動と操体法の確立

1941年、橋本は仙台に「温古堂医院」を設立し、ここで本格的に操体法の研究を続けることになります。しかし、戦時中にはソビエト連邦に一時抑留されるという困難もありました。1948年に帰国した後、橋本は操体法の理論や実践についての研究を深め、1951年からは『日本医事新報』などに執筆を開始しました。また、1949年から1973年までは仙台の赤門学志院東北高等鍼灸整復学校で講義を行いました。

1975年頃からは、操体法がマスメディアに取り上げられるようになり、橋本の名は広まりました。この頃から多くの患者が操体法に触れ、その効果を実感するようになります。有名な回顧録には「医者がダメなら民間療法に頼る患者の気持ちを理解し、痛みを伴わずに治す方法を探求しました」との記述があります。彼の理念は、体の動きと健康状態が深く関連していることを信じ、それを基にした技術でした。

主要な著作

橋本の著作は主に医療雑誌や公刊物に掲載された内容をまとめたもので、学術的な観点からも評価されています。彼の著作には、さまざまなタイトルが含まれており、処方箋だけでなく、操体法の実践に関する詳細な解説も行っていました。

いくつかの主な著書には以下のようなものがあります。

• - 『温古堂先生・万病を治せる妙療法』（1977年）
• - 『からだの設計にミスはない・操体の原理』（1978年）
• - 『誰にもわかる操体法の医学』（1986年）
• - 『論想集・生体の歪みを正す』（1987年）

また、共著においても多くの貢献をし、医学と操体法の融合に挑戦し続けました。

最晩年と影響

橋本敬三は1993年に老衰で亡くなりました。彼の遺した操体法は、今でも多くの人々に影響を与え続け、現代医学でも注目される治療法の一つとなっています。彼の生涯を通じての探求は、体と心の健康に対する深い理解をもたらしました。操体法は、身体を動かすことの力を認識し、医療の新たな道を切り開く貢献を果たしたのです。

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