橋本重郎

橋本重郎：世界を変えたヒヨコの鑑別法

橋本重郎（1894年 - 1988年）は、日本の農学者であり、世界で初めてヒヨコの雄雌鑑別法を発見したことで知られています。彼の発見は、当時の畜産業界に革命をもたらし、その後の研究や実用化に大きく貢献しました。

生涯

橋本重郎は1894年に宮城県で生まれ、1921年に東京帝国大学農学部農学科を卒業しました。その後、農商務省畜産試験場での勤務やイギリス留学を経て、宮崎高等農林学校の教授に就任。1942年には九州帝国大学農学部教授となりました。研究者としてだけでなく、教育者としても多くの学生を育成しました。

初生雛雌雄鑑別法の発見

1924年、橋本は共同研究者とともに、ニワトリのヒナの雌雄を鑑別する方法を発表しました。この方法は、生まれたばかりのヒヨコの肛門内側の突起の有無によって雄雌を見分けるという画期的なものでした。当時、ヒヨコの雌雄を見分けることは非常に困難で、世界中の研究者がその方法を模索していました。橋本の研究は、この問題を解決し、畜産業界に大きな変革をもたらしました。

研究業績と著書

橋本は、ヒヨコの雌雄鑑別法以外にも、畜産に関する幅広い研究を行い、数多くの論文や著書を発表しました。

主な著書

『畜産教科書 汎論 ～ 各論』（冨山房出版、1927年） - 増井清との共著
『改訂畜産教科書』（冨山房出版、1927年） - 増井清との共著
『三訂畜産教科書 汎論』（冨山房出版、1933年） - 増井清との共著
『聖書に見る動物の世界』（同志社大学住谷篠部奨学金出版会、1971年）
『エディンバラ日記:斎藤秀雄と共に』（柴田頼子出版、2004年）

これらの著書は、当時の畜産学の発展に大きく貢献し、現在でも重要な文献として扱われています。

主な論文

増井清, 橋本重郎, 大野勇「雄雄鷄ニ於ケル(退化)交尾器官並ニ初生雛ノ雌雄ノ鑑別ニ就テ」『日本畜産学会報』(1924)
増井清, 橋本重郎, 大野勇「雄鷄に於ける退化交尾器官並に初生雛の雌雄の鑑別に就て」『中央獸醫會雑誌』(1925)
増井清, 橋本重郎, 大野勇「鷄ニ於ケル生殖生理ノ研究:第二 睾丸ノ内分泌組織ニ就テ」『日本畜産学会報』(1926)
橋本重郎「鶩鶏及家鳩ノ交尾器官並ニ雌雄鑑別ニ就テ(邦文)」東京帝国大学 農学博士(1931)
橋本重郎, 松浦平一「ホロホロ鳥(Numida meleagris L.)の交尾器に就て」『日本畜産学会報』(1934)

家族

橋本重郎は、英語学者で『齋藤英和辞典』の著者である齋藤秀三郎の三女、橋本静と結婚しました。また、義兄にはチェロ奏者の齋藤秀雄がいます。義妹には公衆衛生学者の平野ミドリがいます。この家族構成からも、橋本が幅広い分野の知識人たちと交流があったことが伺えます。

晩年と遺産

橋本重郎は1988年にその生涯を閉じましたが、彼の研究は現在でも畜産学の基礎として重要視されています。特に、ヒヨコの雌雄鑑別法は、養鶏業界において不可欠な技術となっており、その影響は計り知れません。橋本の功績は、科学の発展に貢献しただけでなく、社会にも大きな影響を与えた偉大な業績として、後世に語り継がれることでしょう。

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