橘木・大竹論争

橘木・大竹論争の概要



橘木・大竹論争は、1990年代末から2000年代初頭にかけて、経済学における格差の問題をめぐって展開された論争です。この論争の中心には、京都大学の橘木俊詔教授と大阪大学の大竹文雄教授がいました。両者はそれぞれ異なる視点から日本社会の経済格差について考察し、学術的な意見をぶつけ合う形でやり取りが行われました。

論争の発端



1998年、橘木は著書『日本の経済格差』を発表し、日本の世帯単位の所得格差が拡大していることを示すためにジニ係数を用いました。彼はこのデータを基に、かつての「一億総中流社会」という概念が崩れつつあることを指摘しました。橘木の主張は広く受け入れられ、多くのメディアでも取り上げられました。

大竹の反論



しかし、大竹は橘木の主張に異議を唱えました。彼はジニ係数の上昇は、高齢化や単身世帯の増加といった人口構成の変化によるものであり、その見かけ上の傾向だけで貧富の格差が実際に拡大しているとは言えないと主張しました。この見解は2005年に出版された大竹の著書『日本の不平等』でも詳しく述べられました。

継続する議論



橘木も2006年に新たな著書『格差社会—何が問題なのか—』を出版し、大竹の指摘をある程度認めつつ、特に「高齢貧困者」の増加について新たな視点から論じました。ここで、両者は続けて経済格差の解釈について交わした議論が続きました。

政府の姿勢



なお、同年2006年1月19日、内閣府が発表した「経済的格差の動向」に関する資料では、大竹の意見に沿った形で、ジニ係数の増加は高齢化や世帯規模の変化による「見かけ上の拡大」であると説明されました。これにより、経済学的な見解としては、大竹の主張が一定の支持を得た形となりました。

結論



橘木・大竹論争は、日本の経済格差について考える上で重要な議論を生み出しました。この二人の教授による論争は、経済学のなかでも特に注目を集め、社会における所得格差の実態やそれに対する意識を考えるきっかけとなりました。今後もこの問題に関する議論は続いていくことでしょう。

参考文献



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