機関車大追跡

機関車大追跡：南北戦争下の手に汗握る逃走劇

1956年、ウォルト・ディズニー・プロダクションによって制作された『機関車大追跡』（原題：The Great Locomotive Chase）は、南北戦争下の1862年に実際に起きた機関車奪取事件を映画化した作品です。監督はフランシス・D・リヨン、主演はフェス・パーカーが務めました。シネマスコープという当時最新の撮影技術も用いられ、臨場感あふれる映像が特徴です。

史実を基にしたスリリングな展開

物語は、北軍の偵察隊隊長ジェームズ・J・アンドリュース率いる22名の隊員が、南軍の輸送列車を襲撃するために、テネシー州ナッシュヴィル郊外に集結するところから始まります。彼らは農民に変装し、アトランタ北方のマリエッタへと潜入。4月12日未明、彼らはマリエッタ駅で南軍の機関車「ゼネラル号」を強奪し、線路を破壊しながら北上を始めます。

南軍の車掌ウィリアム・フラーは、すぐさま追跡を開始。機関車を乗り換えながら、アンドリュース隊を追撃します。南軍は電信を使って追跡態勢を強化し、最終的にアンドリュース隊は騎兵隊の襲撃を受け、捕縛されてしまいます。全員に死刑判決が下されましたが、その後、脱獄を試みます。脱獄に成功した者と、再び捕らえられた者とに分かれました。脱獄に成功した隊員は英雄として称えられましたが、捕らわれた隊員の功績も忘れられることはありませんでした。

ウォルト・ディズニーのこだわりと時代考証

熱心な鉄道ファンだったウォルト・ディズニーは、この出来事を若い頃から知っており、映画化に強い情熱を注ぎました。彼は、歴史学の教授の経験を持つローレンス・E・ワトキンを脚本と製作に迎え、史実を忠実に再現することにこだわりました。撮影にあたっては、実際の事件現場であるウェスタン・アンド・アトランティック鉄道は近代化が進んでいたため、代わりにノースカロライナ州とジョージア州の鉄道を利用。当時の雰囲気を再現するため、機関車や車両にも細心の注意が払われました。登場する機関車は、当時の実在の機関車を参考に、レプリカや保存車両を借りて使用されました。

賛否両論を巻き起こした結末

『機関車大追跡』は公開当時、高い評価を得る一方で、物議を醸すことにもなりました。多くの批評家は作品を高く評価しましたが、ウォルト・ディズニーの期待ほどの商業的成功は収めませんでした。その理由として、北軍のスパイが失敗に終わり、捕らえられるという、観客の期待を裏切る結末が挙げられています。ニューヨーク・タイムズ紙は、「列車を放棄する時に、興奮は終わる」と評し、主人公の失敗と処刑の場面が、一部の観客に暗い印象を与えた可能性を指摘しました。一方で、「バラエティ」誌は娯楽作品としての価値を認め、「ハリソンズ・レポート」誌もアクション満載の展開を高く評価しました。

歴史に残る機関車追跡劇

『機関車大追跡』は、南北戦争という激動の時代を背景に、スリリングな機関車追跡劇と、人間の勇気と決意を描いた作品です。史実を基にした正確な描写と、ウォルト・ディズニーのこだわりが光る、見応えのある映画として、現在も高い評価を受けています。同じ事件を題材にしたキートンの大列車追跡など、関連作品も存在します。

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